「MUJI passport」に見るO2Oの実像 良品計画の次なる施策ネットとリアルをつなげる(2/3 ページ)

» 2014年06月04日 08時00分 公開
[國谷武史,ITmedia]

MUJI passportで見えてきた購買動向

MUJI passportアプリ

 「MUJI passport」アプリのダウンロードは4月時点で160万件以上。奥谷氏によれば、アプリの利用動向は季節や商戦、キャンペーン時などによって変動するものの、店舗レジでアプリを提示する会員は、来店客全体の12〜13%を占める。会員の購入単価はアプリを提示しない顧客に比べて2倍ほど高く、売上構成比で3割近くを占める状況となっている。

 また、良品計画の直営店と西友のインショップにおける来店客数にも変化が生じた。アプリのリリース前の動向はどちらもほぼ同じだったが、リリース後は直営店の来店客数が前年より伸びている。西友のインショップは、システムの関係から「チェックイン」などでMUJIマイルを貯めることはできても、MUJIショッピングポイントを利用できないためだという。

 リリースから半年ほどデータを蓄積し、2014年に入ってこうしたMUJI passportにおける顧客動向を可視化できるようになってきた。各種データは様々なダッシュボードで管理され、仮説の立案と検証を繰り返している。

 「例えばお客様には店舗派・ネット派がいます。通説でもよく言われますが、分析してみると、店舗とネットの双方で購入する方はやはり累計の購入金額が高い傾向にあり、店舗とネットが競合するものではないと分かります」(奥谷氏)

 この他にマイルステージにおける購買動向をみると、ステージが上がるほどに生活雑貨の購入点数が増えることや、マイルが一定数の範囲では衣服雑貨の購入が多いこと、非会員の場合は日常品の購入が多いこと、といった傾向もみえてきた。

 商品購入以外に、ソーシャルメディアでの話題やチェックインの動向なども分析。ネット上でどの店舗、商品が話題になっているのか、単純に「ほしい」といった反応の数から口コミの内容まで一定期間ごとに比較するなどしている。商品カテゴリーによって口コミの傾向に違いがあり、「商品開発に生かしやすい、しにくい分野といった点も分かります」(奥谷氏)。チェックインの動向からは、曜日別や時間帯別、地域別などの観点から相関関係を分析し、会員にメッセージできる最適なタイミングを把握しようとしている。

 前述したようにMUJIマイルは様々な方法で貯めることができるが、同社では「MUJI.net メンバー」への登録を顧客に推奨している。MUJI.net メンバーにIDを紐づけていくことでMUJIマイルを貯めたり、利用しやくしたりするメリットがあり、同社にとっても顧客をより深く理解していけるという。

 「企業ではカードやアプリ、ソーシャルなどをそれぞれ分析していますが、バラバラに分析していては精度を高めることができません。お客様は1人で何十種類のIDを持っており、CRMで囲い込もうとすればするほど、その一部しか見えなくなります。IDを紐づけてもらうことで1人のお客様を全体的に知ることができれば、次の購買動向が見えてくると考えています」(奥谷氏)

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