「MUJI passport」に見るO2Oの実像 良品計画の次なる施策ネットとリアルをつなげる(1/3 ページ)

良品計画は2013年5月にモバイルアプリ「MUJI passport」をリリースした。アプリのデータ分析によって様々な顧客の購買動向が見えてきたが、WEB事業部長の奥谷考司氏は「それだけでは意味が無い」と語る。

» 2014年06月04日 08時00分 公開
[國谷武史,ITmedia]

 「無印良品」で知られる良品計画は、2013年5月にモバイルアプリ「MUJI passport」をリリースし、顧客接点の拡大に挑んでいる。同社のネットビジネスを担当するWEB事業部長の奥谷考司氏に、MUJI passportの展開を聞いた。

店舗に来てもらう

 「来店客にクーポンを提供したり、有楽町店に『お菓子の街』を作ってソーシャルで話題にしてもらったりと、デジタルマーケティングがO2O(Online to Offline)に効果があると分かってきました。しかし、それでは『クーポン発券機がある店舗はいい』『基幹の有楽町店だから話題になる』となってしまうんですね」(奥谷氏)

 良品計画ではこれまで幾多のマーケティング施策を行ってきたが、WEB事業部にはオンラインでの売上を追求するだけでなく、ネットを通じた実店舗への来店促進をサポートするという役割もあるという。

良品計画 WEB事業部の奥谷考司氏

 「無印良品 ネットストア」など良品計画のオンライン事業は、3年連続で2桁成長をみせるなど好調だ。だが奥谷氏は、「それでも全社売上の1割に満たず、売上の9割以上を支える実店舗のために何ができるかと考えていました。それで、お客様がチラシやテレビよりも長い時間接しているスマホを活用したモバイルCRMに着目しました」と話す。

 MUJI passportの実現に向けて奥谷氏は、2012年夏に金井政明社長にアプリの開発を直訴したという。その中では、10年来展開している「MUJI Card」会員の顧客分析が十分にできていないといった課題を解決していく必要性も提起された。

 スマホであれば、いつでも顧客が肌身離さず持ち歩き、通信機能でいつもでコミュニケーションができる。「何年もやってきたデジタルマーケティングの可能性を、全てのリアルな店舗に行き渡らせることができるわけです」

 モバイルアプリを積極的に利用してもらうには、顧客にとってのインセンティブが必要だった。そこでマイルステージ型のポイントプログラムを導入。奥谷氏によれば、2014年4月の消費増税による影響も考慮して増税前にアプリをリリースことした。

 ただ、当初はポイントプログラムの導入に否定的な声も聞かれたという。「実は良品計画はポイント嫌いの会社なんですよ」と奥谷氏。「無印良品」の名にあるように、同社の事業理念は生活の基本となる本当に必要なものを、安くて良い品として提供することであり、ポイントによって商品を値引きすることの抵抗感が社内にはあったようだ。

 MUJI passportの狙いは、顧客との関係を作り深めて実店舗に来てもらい、購入を楽しんでもらうことにあった。このためポイントが貯まる仕組みとしては、商品の購入やMUJI Cardの契約だけでなく、店舗の半径600メートル以内にいる場合「チェックイン」やソーシャルメディアへの投稿、さらには商品開発への参加(くらしの良品研究所)といった形態も取り入れる。貯めたポイント(MUJIマイル)に応じてマイルステージも上がっていく。MUJIマイルは「MUJIショッピングポイント」として商品購入時などに利用できる。

 このようにMUJI passportには、商品を買うという点だけでなく、「無印良品のさまざまなものに参加することでも楽しんでもらう」という仕掛けが用意されている。

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