NECが強化したクラウド基盤サービスの勝負どころWeekly Memo

NECが先週、クラウド基盤サービス「NEC Cloud IaaS」の強化を発表した。競合他社との差別化ポイントはどこにあるのか。同事業のキーパーソンに聞いた。

» 2014年08月04日 07時30分 公開
[松岡功,ITmedia]

NEC Cloud IaaSで3つの強化策を発表

 NEC Cloud IaaSは、サーバやストレージなどのICT資源をサービスとして提供するもので、NEC神奈川データセンターをサービス拠点としている。サービス内容は、コストパフォーマンスの高い「スタンダード(STD)」と高性能・高信頼の「ハイアベラビリティ(HA)」の2つを用意している。

 最大の特徴は、統一インタフェースを通じて2つのサービスに対するリソース調達・管理をシンプルに行える「プロビジョニング機能」と、外部の複数のクラウドや個別のシステムもまとめて効率的に管理できる「統合運用管理機能」によって、複雑な運用管理にも対応可能なことだ。しかもこれらの操作については、セルフサービスポータルを介して顧客自身でも行えることから、ビジネス環境の変化に柔軟かつ迅速に対応できるとしている。図に示したのがNEC Cloud IaaSの全体像である。

 今回の具体的な強化策は、(1)NEC Cloud IaaS利用時の最適なシステム設計を容易にする設計パターン集の公開、(2)HAサービス上でのSAPアプリケーション稼働のサポート、(3)NEC神奈川データセンターにおける内部統制保証報告書「SOC2保証報告書」の取得 ―― の3つ。

 (1)については、システム構成の設計パターンをWebで公開。基本構成に加えて、サーバ冗長化、サーバ処理性能向上、ハウジングやオンプレミス環境とのシステム連携、複数クラウド基盤サービスの統合運用管理など約20種の設計パターンを提示することで、サービス利用時の最適なシステム設計を容易かつ迅速に行えるようにした。また、設計パターンを今年度末までに約40種に拡充する予定だ。

 (2)については、HAサービスの提供基盤であるIAサーバ「Express5800/ECO CENTER」シリーズが独SAPのハードウェア認定を取得し、SAPアプリケーションの稼働を正式にサポート。これにより、HAサービス上で各種SAPアプリケーションが運用可能となった。

 (3)については、NEC神奈川データセンターにおいて、米国公認会計士協会(AICPA)が定めた、受託会社におけるセキュリティや可用性などに関する内部統制報告書であるSOC2保証報告書を取得。これにより、データの安全性やシステムの信頼性に関して、顧客に対するアカウンタビリティ(説明責任)を向上するとともに、顧客の内部統制監査対応業務の効率化を図ることができるとしている。

NEC Cloud IaaSの全体像(NECの資料より) NEC Cloud IaaSの全体像(NECの資料より)

NECならではのハイブリッド環境を提供

 では今回の強化策からも見て取れるNEC Cloud IaaSにおける競合他社との差別化ポイントはどこか。同社C&Cクラウド基盤戦略本部 主席主幹の畔田秀信氏に聞いてみた。

 「NEC Cloud IaaSの最大の差別化ポイントは、当社ならではのハイブリッドクラウド環境を提供していることにある。一言でクラウドといっても、コストを最適化したい、需要の変動へ柔軟に対応したい、何より信頼性を重視したいなど、求められる要件はさまざまだ。その結果、クラウドを含めたさまざまなICT環境を使い分ける形のハイブリッドクラウドへのニーズが高まってきており、それに伴って運用管理も複雑になってきている。NEC Cloud IaaSはそうしたニーズに応えたものだ」

NEC C&Cクラウド基盤戦略本部 主席主幹の畔田秀信氏 NEC C&Cクラウド基盤戦略本部 主席主幹の畔田秀信氏

 「そのため、NEC Cloud IaaSではSTDとHAの2つのサービスモデルを用意するとともに、プロビジョニング機能や統合運用管理機能をセルフサービスポータルによって容易に利用できるようにした。こうした利用環境は、パブリッククラウドだけを展開するベンダーには提供できない。さらに今回の強化では、最適なシステム設計を容易にする設計パターン集を公開した。ハイブリッドクラウド環境を対象に統合運用管理まで含めた形での設計パターン集を用意しているところが、まさに当社ならではのアドバンテージだと自負している」

 こう語る畔田氏は、さらにNECが強みとするシステムインテグレーション(SI)力も競合他社との差別化ポイントになると強調する。

 「クラウド化が進めばSIが縮小するとの見方があるが、そうは思わない。システムだけでなくクラウドそのものをインテグレーションする仕事が、ハイブリッドクラウド環境ではむしろ増えていくと考えている。インテグレーションの仕方が多種多様になればなるほど、SI力が大きな差別化ポイントになると、このところのNEC Cloud IaaSへの需要からも実感している」

 もう1つ、畔田氏の話で興味深かったのは、ハードウェアベンダーならではのハイブリッドクラウドへの取り組みだ。同氏によると、「当社にはExpress5800サーバを使っていただいているお客様が多数おられる。そのオンプレミス環境と連携したハイブリッドクラウドをお客様の用途に合わせて提案していくのもこれからの私たちの役目だ」という。

 折しもマイクロソフトのサーバOS「Windows Server 2003」のサポートが2015年7月15日に終了することを受け、同OSを使用中のユーザー企業は新しい環境への対応が迫られている。これはNEC Cloud IaaSにとっても重要な潜在需要となる。

 今後は、ハイブリッドクラウドへ向けたさらなる強化とともに、PaaSなどのサービスメニューの拡充、海外を含むサービス提供拠点の拡大などにも取り組むというNEC Cloud IaaS。どのような進化を見せるか、注目しておきたい。

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