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» 2014年09月22日 08時00分 UPDATE

Weekly Memo:WatsonとSiriは“化学反応”を起こすか

IBMが人工知能技術「Watson」を活用した分析サービスを発表した。先頃提携したAppleの音声認識技術「Siri」と組み合わせれば、新たな“化学反応”が起きるかもしれない。

[松岡功,ITmedia]

IBMがWatsonベースの分析サービスを発表

 米IBMが9月16日(現地時間)、人口知能技術「Watson」を活用した企業向けデータ分析サービス「Watson Analytics」を発表した。

 Watsonは、IBMの創設者トーマス・J・ワトソン氏にちなんで命名されたコンピュータで、人間の能力に対抗して「迅速かつ正確に自然言語での質問に答える」ことを目指して開発された。2011年にテレビのクイズ番組「Jeopardy!」で人間と対戦したことでも知られている。

 Watsonと同じ自然言語処理やアルゴリズム、探索ツールを備えたWatson Analyticsは、IBMが展開しているIaaS「SoftLayer」上のクラウドサービスとして提供され、「IBM Cloud marketplace」で調達できるようになる。PCだけでなくスマートフォンなどのモバイル端末でも利用できるという。IBMは30日以内にベータ版を提供し、基本機能を無償とするフリーミアム方式によって年内にも一般提供を開始するとしている。

 これによって、Watsonの技術をベースとしたデータ分析サービスを、企業でも容易に利用できるようになるわけだ。

 そこで注目されるのは、この動きが今年7月に発表された米AppleとIBMの提携にどのような影響を及ぼすかだ。

Appleのティム・クックCEOとIBMのジニー・ロメッティCEO(クックCEOのツイッターより) Appleのティム・クックCEOとIBMのジニー・ロメッティCEO(クックCEOのツイッターより)

 両社の提携は、IBMが持つビッグデータ分析のノウハウをAppleのスマートフォン「iPhone」およびタブレット端末「iPad」向けに提供し、ビジネスアプリケーションの新しいひな形を通じて、企業のモバイル利用を変革していこうというのが狙いだ。

 両社の提携について、Appleのティム・クックCEOは、「IBMの優れたビッグデータ分析のノウハウをiOS端末ユーザーに提供することは、Appleにとっても巨大なビジネス市場へのさらなる参入の機会が開かれることになる。同時にこの取り組みは、AppleとIBMだけが提供できるイノベーションである」と語っている。

 また、IBMのバージニア(ジニー)・M・ロメッティCEOも、「IBMはAppleとの提携によって、ビッグデータ分析、クラウド、ソフトウェア、サービスにおけるリーダーシップを一層発揮できるようになる。両社の提携は、人々の働き方や企業の役割、さらには産業構造の変革をももたらすことになるだろう」との見解を示している。

AppleとIBMだけが提供できるイノベーション

 こうした両社の意気込みからすると、今回IBMが発表したWatson Analyticsも当然、戦略ツールとして活用されるのは間違いない。中でも筆者が特に注目したいのは、iPhoneに搭載されている音声認識と人工知能の技術を駆使した「Siri」との連携である。マイクに話し掛けると意味や文脈を判断し、応対したり、関連する情報を探し出したりしてくれる機能で、活用しているiPhoneユーザーも少なくないだろう。

 SiriはAppleが2010年に買収した同名のベンチャー企業が手掛けた技術で、元をたどれば米国防総省系の研究組織である国防高等研究計画局(DARPA)が手掛けていた人工知能の研究に行き着く。DARPAといえばインターネットを生み出した機関である。

 そんなルーツを持つSiriをiPhoneに搭載することにこだわったのは、ほかでもないスティーブ・ジョブズ氏だ。従ってSiriは、同氏が遺産として残した“iPhone進化の象徴”ともいえる。

 その理由は、ジョブズ氏が長年こだわってきたマンマシン・ユーザーインタフェースの主軸が、文字・画像と手の動きを組み合わせた従来型から、音声自然言語によるやりとりへとパラダイムシフトする可能性があるからだ。

 そう考えると、Watson AnalyticsとSiriが連携すれば、ビッグデータ分析とユーザーインタフェースのイノベーションがモバイル分野で一気に進むのではないかとの期待が膨らむ。

 さらに、前回の本コラム「Apple WatchがiPhoneを呑み込む日」(2014年9月16日掲載)で述べたように、ワークスタイルやライフスタイルの変化に伴って、腕時計型ウェアラブル端末である「Apple Watch」が iPhoneに取って代わってモバイル分野の主流になるかもしれない。SiriはApple Watchにも、もちろん搭載されている。

 WatsonとSiriの組み合わせが、果たしてどんな“化学反応”を起こすか。AppleのクックCEOが語った「AppleとIBMだけが提供できるイノベーション」の“ど真ん中”のような気がする。

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