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» 2014年09月29日 07時30分 UPDATE

Weekly Memo:IaaSにとどまらないAmazonのクラウド事業

IaaS型クラウドサービス市場で大きな存在感を持つAmazon Web Services。だが、そのサービス内容を見ると、もはやIaaSにはとどまらないようだ。

[松岡功,ITmedia]

AWSのサービスは“コンピュータクラウド”

wm01.jpg アマゾンデータサービスジャパン パートナーアライアンス本部の今野芳弘本部長

 Amazon Web Services(AWS)のクラウドサービスはどこまで広がっているのか。そんな問題意識を持って、AWSのサービスを手掛けるクラウドインテグレーターのテラスカイが先頃、東京・目黒のアマゾン目黒オフィスで開いたプライベートセミナーを取材した。そこでAWSの事業を日本国内で展開しているアマゾンデータサービスジャパン パートナーアライアンス本部の今野芳弘本部長の話を聞くことができた。

 今野氏によると、AWSのサービスは現在、世界190カ国で数十万の顧客企業に利用されており、その業種も規模も多岐にわたるそうだ。日本では2011年3月に東京リージョン(東京のデータセンター群)を開設してサービスを提供し始め、これまでに2万以上の顧客企業に利用されているという図1

wm02.jpg 図1:日本の主要な顧客企業

 なぜ、AWSのサービスは多くの企業に利用されているのか。今野氏は次の5つのポイントを挙げた。

 まず1つ目は「アジリティ」。つまりスピード感だ。「オンプレミスは既存のデータセンターでは、新しいインフラの構築は複雑かつ遅くなりがちで、インフラの調達に数週間かかってしまうこともある。その点、AWSのサービスだとワンクリックでインフラを素早く調達でき、変更も簡単にできる」(今野氏)

 2つ目は「プラットフォームの広がり」。AWSのサービスは現在、図2のようにインフラだけでなくスケーラブルなアプリケーション構築に役立つ幅広い領域をカバーしており、日本では約40のサービスを提供している。データセンターはグローバルで10リージョン(地域)に25カ所のアベイラビリティゾーン(データセンター群)を展開している。

wm03.jpg 図2:プラットフォームの広がり

 「AWSのサービスはIaaSと言われるが、見ての通りIaaSだけではない。約40のサービスからなる幅広く深いプラットフォームだ。われわれはこれを“コンピュータクラウド”と呼んでいる」(今野氏)

 3つ目は「継続的な改善とイノベーション」。AWSはサービス開始以来、927の新サービスや新機能をリリースしてきたという。しかも2013年で280、2014年は8月1日時点で270と追加スピードに加速度がついている(図3)。「このイノベーションのスピードの速さがAWSの大きなアドバンテージだ」(今野氏)

wm04.jpg 図3:継続的な改善とイノベーション

 4つ目は「低価格で柔軟な料金体系」。今野氏によると、AWSのサービスはこれまで44回の値下げを実施してきており、それがより多くの顧客を獲得して新たな投資につながり、効率をさらに改善することによって、一層のコストダウンを促進しているという。

AWSサービスを活用するための6つのポイント

 そして5つ目が「エコシステム」。今野氏が担当しており、ユーザーグループとパートナーネットワークの2つがある。ユーザーグループは現在、全国で45支部を数え、日本中に広がっている。また、エンタープライズユーザーグループもあり、これには40社以上のCIOや情報部門長が名を連ねている。

 一方、パートナーネットワークは図4のように、95社のコンサルティングパートナーと112社のテクノロジーパートナーからなる。さらに、最近ではパートナー同士がさまざまな協業を進めるケースも出てきているという。

wm05.jpg 図4:パートナーネットワークによるエコシステム

 また、今野氏はユーザー企業が実際にAWSをどのように活用しているかについて次の6つのポイントを挙げ、それぞれに代表的な事例も幾つか示した。ここではそれぞれに2つずつ事例を挙げておく。

 まず1つ目は「開発・検証環境」。東京証券取引所ではOracleデータベースの開発・テスト環境において、5年で9割のコスト削減を実現し、固定資産管理からの解放を図った。また、日清食品グループでは基幹業務システムにおいて、ERPアプリケーションの開発環境の調達における迅速化とコスト削減を実現した。

 2つ目は「新規アプリケーションサービス」。良品計画ではAWSのデータ解析基盤によって安価なBI(ビジネスインテリジェンス)環境を実現し、顧客のニーズや購買行動を迅速かつ正確に把握できるようになった。また、日本経済新聞社ではモバイルメディアにおいて、システム構築期間を短縮し、運用負荷と費用を削減。規模に合わせたシステム拡張の柔軟性も確保した。

 3つ目は「既存のアプリケーションをクラウドで補強」。セゾン自動車火災保険ではコンテンツ配信において、メディアからのトラフィック流入に対して安定的に配信することにより、25%のレスポンス改善を図った。また、アンデルセンでは高負荷なバッチ処理において、4時間かかっていた処理を20分に短縮した。

 4つ目は「既存のインフラをクラウドで補強」。ディップでは3分の1のコストで国をまたぐバックアップとDR(ディザスタリカバリ)環境を実現した。また、ソニー銀行は銀行業務の一部をAWSに移行し、既存のメインフレーム環境とハイブリッド連携を実現。これにより、統一した管理体制を実現し、37%のコスト削減を図った。

 5つ目は「既存のアプリケーションの移行」。ノエビアホールディングスは人事・会計システムを2.5カ月の短期間でAWSへ移行し、自社マシンルームを撤廃した。また、HOYAはプライベートクラウドからSAP環境を2.5カ月で移行し、国をまたいだDR構成を実現。これにより、50〜60%のコスト削減を図った。

 そして6つ目は「全てのITをクラウドで」。丸紅は業務システムの全インフラを数年かけてAWSに移行した。また、日本通運は1000台以上のサーバをほぼ全てAWSへ移行し、5年間で40%のコスト削減を実現した。

 以上が今野氏の説明である。6つのAWSサービス活用ポイントはそれぞれの事例に基づくものだけに説得力がある。

 今回の今野氏の話で筆者が強く印象に残ったのは、プラットフォームの広がりで「AWSはIaaSだけではない」と強調したことと、パートナーネットワークによるエコシステムの広がりだ。サービスの領域が広がることでパートナーも一層適用できる範囲が広がる。その逆のパターンもあるだろう。まさに相乗効果を生み出している感じだ。

 改めてAWSの勢いを強く感じた取材だった。

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