HP新社長の吉田氏が目指す、真の“顧客志向”

約8年間務めたSAS Instituteを退職し、日本HPの社長に就任した吉田仁志氏。日本HPのどこに魅力を感じたのか。就任会見で就任に至った理由や抱負を語った。

» 2015年01月08日 18時15分 公開
[池田憲弘,ITmedia]

業績への貢献をコミットできる“顧客志向”を目指して

photo 日本ヒューレット・パッカード 代表取締役 社長執行役員に就任した吉田仁志氏

 既報の通り、2015年1月1日、日本ヒューレット・パッカード(日本HP)の代表取締役 社長執行役員に吉田仁志氏が就任。1月8日に行った記者会見で、吉田氏が就任に至った理由や抱負を語った。

 「今は社会全体が転換期を迎えている。各産業のビジネスモデルも変わらざるを得ない状況だ。この歳になって、どうやったら日本を“よりよい状態”で次の世代に渡せるのか、と考えるようになった。HPは包括的なソリューションをグローバルで展開できる世界トップクラスの企業。今までと異なる社会を実現していくために、ITが果たす役割は大きく、HPができることも多い。変革の先頭に立って世界を変えていける力がHPにはある」(吉田氏)

 吉田氏が2006年から約8年間務めたSAS Instituteから日本HPへと移った背景には、「社会貢献」を重視する吉田氏自身のポリシーがあるという。同社は「HP Living Progress」という社会貢献に対するスローガンを掲げているが、利益と社会貢献をバランスさせる姿勢に共感するとともに、「自分の経営スタイルに合っており、無理なく力を発揮できると思った。HPを元気にすることで、パートナー企業や日本を元気できるチャンスだと思っている」(吉田氏)そうだ。

 今後、クライアントやパートナー企業、社員の話を聞く中で戦略を考えていくとのことだが、吉田氏が目指すのは更なる“顧客志向”だ。「HPは派手さはないが、クオリティが高い製品を提供している。今後はより顧客の業績に貢献できるような組織にしていきたい。顧客への価値提供という観点では、もっと高い視点に立って顧客と議論すべきだし、もっと露出やアピールの機会を増やすべきだろう」(吉田氏)

日本HPも2015年10月までに分社化

photo 米HP アジア太平洋・日本地域担当エンタープライズグループ シニアバイスプレジデント ゼネラルマネージャのジム・メリット氏

 会見に登壇した前社長のジム・メリット氏(米HP アジア太平洋・日本地域担当エンタープライズグループ シニアバイスプレジデント ゼネラルマネージャ)は、吉田氏への期待とともに、HPの分社化について言及した。

 米HPは2014年10月に会社をエンタープライズ向け事業の「Hewlett-Packard Enterprise」と、パーソナルシステムおよびプリンタ事業の「HP Inc.」に分割する計画を発表していたが、日本HPについても2015年10月末までに分社化を完了させるという。

 Hewlett-Packard Enterpriseは、既存のITシステムから、新しいスタイルのITシステムへの移行を支援する事業が中心となり、大企業から中小企業、官公庁まですべてをカバーするという。一方のHP Inc.はビジネスパーソンを含む個人のクリエイティビティを発揮するツールを提供する企業を目指すとのことで、3Dプリンタなどの新分野にも参入する予定だ。

 「現在ITを取り巻く環境は急変しており、非構造化データを含むビッグデータへのアクセスや、コストダウンを導くクラウド、そしてモバイルといったトレンドがある。企業がスピードやROIをより強く求められる状況だ。分社化をすることで、ユーザーにフォーカスした施策が打てるとともに、パートナー企業にとってもビジネスがシンプルになり、さらなる価値を提供できるようになる」(メリット氏)

photophoto HPはエンタープライズ事業の「Hewlett-Packard Enterprise」(写真=左)とパーソナルシステムおよびプリンタ事業の「HP Inc.」(写真=右)に分社化する

 2012年にHP社長兼CEOのメグ・ホイットマン氏が発表した5カ年計画では、2013年度に財政基盤の再構築、2014年度に投資と成長を目標としており、2015年度はその成長を加速させる年となっている。メリット氏は「この5カ年計画に基づき、会社はスリム化し、バランスシートも改善した。2015年に変革を加速していく能力については、この3年間のあゆみを考えても成し遂げられる自信がある」と強くアピールした。

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