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» 2015年03月20日 08時00分 UPDATE

萩原栄幸の情報セキュリティ相談室:テロ対策に見るここがヘンだよ日本の感覚 (1/3)

海外のテロに日本人も巻き込まれる現代、国内では2020年に向けてテロ対策が急務だ。しかし、日本人が講じる対策と諸外国の対策を比べてみると、日本の対策はどこかズレている……。

[萩原栄幸,ITmedia]

 筆者が常任理事兼企画部会長を務める日本セキュリティ・マネジメント学会の公開討論会が、2月28日に開催された。今回は討論会の話題から、ちょっと考えさせる内容をご紹介しよう。

 討論会のテーマは、「東京オリンピック2020の安心・安全〜」である。諸外国のテロ対策がどうなっているのか――日本の警察や防衛省が、米国やフランスなどのテロ対策先進国へ視察に出向く回数が増えているらしい。だが、先方のテロ対策担当者は戸惑うという。なぜなら彼らがテロ対策の参考にしているのは、日本の地下鉄サリン事件だというからだ。自分たちが参考にする国の政府関係者が、逆に視察に来るというのが不思議でならないという。

異なる地下鉄の構造

 サリン事件をきっかに、日本では有毒ガスをスムーズに排気できるよう電車の窓が外(ホーム側)から開けられる仕組みになったという。筆者も通勤ラッシュ時に駅員がホームから電車の窓を開けている様子を何度か目撃した。万一の時は駅の換気能力を最大限にして、とにかくガスを屋外に放出するという。

 諸外国の対策担当者たちは、まずサリンの製造プラントを分析した。未熟なプラントで極めて希釈されたサリンが製造されたことを知ったという。

 しかし、現在の幾つかの国家やテロリストが保持しているといわれるサリンは高濃縮であり、その対応方法は自ずと異なる。現代のテロリストが地下鉄内でサリンを散布したとしよう。日本は電車の窓を開けて、最大の力でホームを換気する――そうなると、被害者は幾何級数的に増えるのは間違いない。

 そのため例えば、米国の地下鉄は(1)窓が開かない、(2)緊急時以外は車両の間の行き来ができない――構造だ。万一の場合、その車両の乗客たち(仮に100人とする)の命をとるか、換気でガスを拡散させて数十万人の命をとるのか、という究極の選択をするしかなくなる。米国では100人の乗客が犠牲になるが、その車両ごと隔離するという。窓は簡単には割れない。ドア開閉もできない。そうやって、その密閉された空間にサリンを閉じ込める。サリンはとても不安定で、比重が重いという性質を踏まえて検討した上での結論らしい。

 さて読者の皆さんはどう感じるだろうか。

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