IBMがクラウド事業において新たなPaaS拡大戦略に乗り出した。キーワードは「APIエコノミー」。果たしてその狙いは何か。
「これからはIBMのPaaS上で“APIエコノミー”をどんどん広げていきたい」
日本IBMでクラウド事業を統括する小池裕幸執行役員は、同社が先頃開いた同事業戦略の記者説明会でこう強調した。「APIエコノミー」とは何なのか。こういう新しい言葉を使い始めたときのIBMは、その言葉に重要な戦略展開の意図を込めている場合が多い。
小池氏はまず、IBMのPaaS型クラウドサービスである「Bluemix」の仕組みについて、オープンソースソフトウェア(OSS)であるPaaS構築用ソフト「Cloud Foundry」とIaaS構築用ソフト「OpenStack」、そしてIBMのIaaS型クラウドサービスである「SoftLayer」によって構成され、今回これらの上に「ACE(Application Composition Environment)」と呼ぶ新たな階層を設けたと説明した。(図参照)
このACEが、アプリケーションサービスであるSaaSを組み立てる基盤となる。ポイントはSaaSを「開発」するのではなく、「組み立てる」ことにある。どう組み立てるのかというと、ACEとそれぞれのSaaSの間をAPIで連携させ、そのAPI同士を柔軟に組み合わせていくことで新たなSaaSを簡便かつスピーディに作り上げていくのである。
例えば、地図情報サービスや決済サービスといった既存のSaaSを、新たに作り上げるアプリケーションサービスのSaaSに組み入れたい場合、ACE上でそれぞれのAPIを連携させてマッシュアップしていくイメージだ。こうしたACEの働きを、IBMではAPIエコノミーと呼んでいる。
したがって、APIエコノミーはACEの整備もさることながら、新たなSaaSを柔軟に組み立てられるように、さまざまな機能を持つ既存のSaaSの品揃えも必要となってくる。小池氏によると、そうしたSaaSの数は現在、グローバルで300種類以上に達し、日本国内でもそのうち100種類以上が利用できる状況になっているという。そうした“土壌”ができあがってきたことが、今回APIエコノミーという新たな戦略を展開し始めた背景にある。
さらにIBMでは、APIエコノミーを利用する技術者が生産性を一層上げることができるように、APIデータベースを検索して最適なAPIのマッチングを行えるようにした「API Harmony」、既存のシステムとクラウドをセキュアにつないでモバイルアプリなどから基幹業務に接続する仕組みを強化した「Secure Passport Gateway」といった機能も新たに用意している。
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