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» 2015年07月28日 07時30分 UPDATE

ビッグデータ利活用と問題解決のいま:モバイルヘルスと個人情報保護の両立の最前線とは (1/3)

「EU個人データ保護規則」制定化への動きは、欧州各国のモバイルヘルス(携帯機器活用医療)推進施策にも大きく影響する。グローバルな医薬品・医療機器企業の欧州拠点が集中するアイルランドではどのようなことが起きているのだろうか。

[笹原英司,ITmedia]

モバイルヘルスとビッグデータの融合を推進するアイルランド

 前回の記事で欧州連合(EU)における2014年〜2020年の研究開発フレームワーク計画「ホライズン2020」を紹介した。各加盟国のレベルでも「モバイルヘルス」(携帯通信機器を利用した医療)の研究成果の事業化、産業創出に向けた取り組みが継続的に行われている。

 本連載の第11回で取り上げたアイルランドをみると、2012年3月に雇用・企業・イノベーション省(DJEI)が「Research Prioritisation Plan」を公表した。その中では医療システムの負担を軽減し、高齢者の生活の質を向上させることを目的とする「コネクテッドヘルス、自立型高齢者生活」がテーマに掲げられ、アイルランドが在宅患者を対象とした遠隔医療や生活支援のためのソリューションの実証実験場としての役割を担う方向性が打ち出されている。

csa26-1.jpg 英国の西隣に位置するアイルランド(出典:Wikipedia)

 産官学連携のレベルでは、ダブリンシティ大学(DCU)、アイルランド国立大学ゴールウェイ校(NUI Galway)、ユニバーシティカレッジ・コーク(UCC)、ユニバーシティカレッジ・ダブリン(UCD)の協働プロジェクトとして2013年7月に設立された「データアナリティクス研究所」(INSIGHT)が、「コネクテッドヘルス」(慢性疾患管理・リハビリテーション、新型パーソナルセンシング、健康医療とライフサイエンスの連携)と、「ディスカバリー経済」(スマートエンタープライズ、ニュース・メディアの未来、分析ソサイエティ、ディスカバリー分析)の融合領域として、ビッグデータ分析の研究開発に注力している。

 例えば、ダブリンのスポーツ外科クリニック(SSC)とINSIGHT、ダブリンシティ大学および同大学健康・ヒューマンパフォーマンス学科の共同チームは、ワイヤレス慣性センサを利用して下肢傷害患者の身体運動を正確に追跡し、センサから収集されるビッグデータをリアルタイムに分析して、結果を患者と医師にフィードバックする高度アルゴリズム開発プロジェクトを進めている。

 また2013年、アイルランド政府商務庁および産業開発庁の支援を受け、UCDとリムリック大学(UL)との協働プロジェクトとして、コネクテッドヘルス応用研究(ARCH)センターが設立され、モバイルヘルスを利用した認知症対策プロジェクトを実施している。

 加えてARCHは2015年5月、Boston Scientific、Novartis、Philipsといったグローバル医薬品・医療機器企業を含む15の産業パートナーとともに、中核研究センター機能の本格稼働を発表した(産業開発庁関連リリース)。認知症から他の領域にICT利活用の対象を拡大して、事後的な対処医療モデルから予防医療モデルへの転換を推進する方向性を打ち出し、データセキュリティ、規制対応、ストレージ/分析、標準化/品質など、ビッグデータやモノのインターネット(IoT)に関わるテーマを研究の柱に据えたのが特徴だ。

 アイルランドは、ビッグデータを支える基盤技術分野でも定評がある。例えば、INSIGHTとARCHの双方に関わるUCDは、理化学研究所、東京工業大学、九州大学、富士通と、スーパーコンピュータ「」に関する国際共同研究を行っており、大規模グラフ解析などで貢献している(理化学研究所リリースを参照)。

csa26-2.jpg 「京」の世界第1位(Graph500)の奪還にはアイルランドとの関わりも
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