現行の「EUデータ保護指令」では、個人データ保護のための具体的な手段と方法は加盟国に任されるが、今後、「EU個人データ保護規則」への格上げが実現すると、その内容がそっくり加盟国の国内法体系の一部となり、個人データ利活用を前提とする各国のモバイルヘルスのイノベーション動向にも大きな影響が及ぶ。
北米の代表的な医薬品・医療機器企業やインターネットビジネス企業は、モバイルヘルスへの研究開発投資やM&Aを積極的に行っており、その欧州事業/海外事業統括拠点が集中するアイルランドは、EU個人データ保護規則をにらんだ欧米間のハーモナイゼーションの最前線に位置することになる。モバイルヘルス関連ソリューションの欧米市場展開を狙う日本企業にとっても、EU域内におけるアイルランドの政府機関や研究機関の動きは気になるところだ。
2015年6月15日、EUの閣僚理事会がEUデータ保護規則提案に暫定合意したが、その翌16日にベルギーのブリュッセルで、欧州を代表するバイオバンクネットワークのBBMRI-ERIC(Biobanking and BioMolecular resources Research Infrastructure – European Research Infrastructure Consortium)などが中心となり、「ヘルス・サイエンスデータのための行動日」というイベントを開催している(関連リリース)。
アイルランドのINSIGHTは、ビッグデータ分析でBBMRI-ERICと連携しており、この行動に関する声明(関連リリース)で以下の3点を強調している。
ちょうど日本では、個人情報保護法改正に関連して、個人情報の取扱のグローバル化に向けたルールづくりが注目されているところだ。前述の「京」を利用したIT創薬など、日本が目指すヘルスイノベーション戦略にとっても、個人データ保護の取扱は重要課題である。日欧間のハーモナイゼーションにとっても、アイルランドの動向が注目される。
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