第8回 「進撃の巨人」で知るインシデント対応 3兵団とセキュリティ実態の関係日本型セキュリティの現実と理想(1/3 ページ)

標的型攻撃などのセキュリティインシデントに対応するCSIRTやSOCが注目を集めている。これらはどのような存在なのだろうか。まずは「進撃の巨人」を例に解説しよう。

» 2015年10月08日 07時00分 公開
[武田一城ITmedia]

 欧米などより遅れてしまっているが、日本でもセキュリティ対策の新たな動きとして「CSIRT」(Computer Security Incident Response Team)や「SOC」(Security Operation Center)などを組織内に設置するという機運が高まっている。

 セキュリティの専門家にとってこれらの存在や機能は常識であるものの、一般の方にはなじみのないものだろう。今回は、本連載でも触れた「進撃の巨人」を例に、これらについて解説してみたい。まずはこの物語の世界に登場する「憲兵団」「駐屯兵団」「調査兵団」の3つの兵団を参考に、現実世界でCSIRTやSOCが必要とされる背景を説明する。

「進撃の巨人」の世界観とセキュリティ

 以前の記事「『進撃の巨人』で理解する多層防御」では、標的型攻撃への防御として必要される多層防御の構造について述べた。おさらいになるが、まずはこの物語の世界観がセキュリティ対策につながる点を紹介したい。

 「進撃の巨人」の世界で人類は生態系の頂点にいない。生態系の頂点にいるのは高さ数メートルから数十メートルに達する巨人であり、その捕食対象は、なぜか人間だけだ。この世界では現実の私たちの世界のように、たくさんの人々が世界各地で繁栄することはできず、生息できるのは、半径480キロ程度のエリアの中だけだ。

日本型セキュリティ 「進撃の巨人」の世界での人類の生息域。作品にドイツの名称が多く使われているので、ドイツ付近にサークルを置くと、このようなイメージだ

 人類の生息域がこのエリアに限られているのは、エリアの周囲が高さ50メートルほどもある三重の壁に守られているからで、その中でのみ人類は唯一安全に生活できる。巨人の身長は最大で15メートルほどであり、知能は低く道具も使えないので、この壁をよじ登ることができない。壁の内側は人類の楽園のようになっており、壁が完成してからの100年間は巨人の侵入を一切許さない平和な状況だった。物語は主人公に大きな事件が発生することで話が進展していくのだが、ここでは割愛する。

日本型セキュリティ 壁の構造のイメージ図
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