第18回 機動戦士ガンダムの量産型モビルスーツから学ぶセキュリティ戦略日本型セキュリティの現実と理想(1/3 ページ)

今回は「機動戦士ガンダム」の世界観を題材に、セキュリティ対策とそのための戦略を考えるヒントを提示してみたい。

» 2016年03月10日 07時00分 公開
[武田一城ITmedia]

機動戦士ガンダムの世界とモビルスーツ

 「ガンダム」は、1979年4月7日から放映がはじまり、ほぼ1年間(全43話)にわたって放映された子供向けのアニメーションだ。爆発的な人気を博して社会現象となった。それは一過性のブームに留まらず現在まで、30年以上続編が制作され続けている。放映当時子供どもだった視聴者はいまでは大人になり、その当時生まれていなかった若い人達や海外にもファンが多く存在し、その裾野が広がっている。

 このガンダムの舞台は、人類が宇宙に進出し、移民を開始して数十年が経過した頃という設定だ。この未来の地球では全ての国々は統一されて「地球連邦」という組織になっている。しかし、最も遠いスペースコロニーのサイド3が独立を宣言し「ジオン公国」となる。ガンダムはその2国間の戦いの話だ。

 このアニメの一番のポイントは、「モビルスーツ」という人型兵器が主力の武器となっていることだ。モビルスーツは、宇宙空間や地球の地上、水中などの用途に合わせた複数の機種が存在する。その他にも試作機や高性能な専用機、一般兵士が乗り込む量産型というさまざまな機体が入り混じり、現在の軍隊の戦車や戦闘機などに近いリアルな設定となっている。

 それまでのアニメは、たいてい1機限りのスーパーロボットが敵キャラと戦うという分かりやすいものだったが、ガンダムはこのような“量産型”というリアルな概念を持っていたことが非常に先進的で、私を含むその時代の子どもたちに大ヒットした。

地球連邦軍とジオン軍の量産型モビルスーツ戦略の違い

 しかし、この物語の敵対する2国でこのモビルスーツの戦略は大きく異なる。ジオン軍は、モビルスーツの第一号を開発したこともあり、開発技術は地球連邦軍を大きく上回っていた。第一話に出てきた「ザク」を手始めに、量産型だけでも「グフ」「ドム(リックドム)」「ズゴック」「アッガイ」「ゲルググ」など多岐にわたる。さらに「ギャン」などの試作機や、「モビルアーマー」というより大型で攻撃力の高い機体もあり、あり余る先進の開発力を見せつけるかのように、最新兵器を惜しみなく投入する。つまり、環境に合わせて最大限の技術をつぎ込んで開発された兵器の質で圧倒する戦略だ。

 それに対して地球連邦軍の戦略は対照的だ。物語の中盤を過ぎるまでに出てくるモビルスーツは、主人公のアムロが乗るガンダムのほか、中長距離の支援用として「ガンキャノン」「ガンタンク」の3体があるだけだ。

 この3体は、最初に作成した試作機ということもあるが、次々に現れる敵方のモビルスーツやモビルアーマーとは到底比較にならない。そして、やっと物語の中盤で量産型モビルスーツの「ジム」が誕生する。しかし、地球連邦軍の量産型モビルスーツは終戦まで(派生型は複数あるものの)この1機種だけだ。つまり、ガンダム他の3機種の試作機をそのまま戦場に投入することで得たデータを、たった1機の量産型モビルスーツに全て注ぎ込む、リソース集中型の戦略だったということだ。

ジオン軍と地球連邦軍におけるモビルスーツの種類の違い
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