マイクロソフトが“ハイブリッドクラウド”に本腰を入れる理由Weekly Memo(2/2 ページ)

» 2016年04月11日 17時00分 公開
[松岡功ITmedia]
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AWSやGoogleにはないマイクロソフトのハイブリッド戦略

 では、Intelligent Cloud Platformはユーザーにとってどのようなメリットがあるのか。それを端的に示したのが図2である。すなわち、共通のAzureエコシステムが利用でき、アプリケーション開発を統合して行え、プライベートクラウドから例えばグループ会社などにAzureサービスを提供できるようになる――といった具合だ。

Photo Intelligent Cloud Platformのユーザーメリット

 こう説明した佐藤氏は最後に、「これまでクラウドというと、パブリックなのかプライベートなのか、データセンターの場所はどこなのかといった議論があったが、1つの大きなITリソースプールを共有して適材適所に利用するIntelligent Cloud Platformならば、そんな議論は意味がなくなり、IT投資も最適化できる。それこそが、マイクロソフトのクラウド新戦略だ」と強調した。

 マイクロソフトのクラウド新戦略は、競合状況に照らしても非常に有効に見える。というのは、IaaSとPaaSを合わせたクラウドプラットフォーム分野においてマイクロソフトと激しい戦いを繰り広げているAmazon Web Services(AWS)やGoogleは、DHCSのようなオンプレミスのプライベートクラウド向けの商材がないからだ。今後、企業のIT環境としてハイブリッド利用が主流になっていけば、マイクロソフトは圧倒的に有利になる。

 だが、企業のIT環境がどうなっていくかという予測は専門家の間でもまちまちだ。同じプライベートクラウドと言っても、パブリッククラウドのメリットも採り入れて「プライベートクラウド・アズ・ア・サービス」とも呼ばれる「ホステッドプライベートクラウドサービス」が、今後のクラウド利用の主流になるとの見方も少なくない。

 要は、パブリッククラウドやホステッドプライベートクラウドによる「アズ・ア・サービス」と、サービスではないオンプレミスの割合が今後、どれくらいの時間でどう推移していくのか。それによってハイブリッド利用のボリュームも決まってくる。この点は筆者もこれからの取材で詰めていきたい。

 最後にもう1つ、今回のDHCSにまつわる話題を提供しておきたい。実はDHCSのような「Azure搭載システム」が登場してきた背景には、およそ6年にわたるマイクロソフトのクラウド事業における試行錯誤があり、DHCSはその経緯から商品化された。

 同じ経緯で、HP(現HPE)も2015年12月に英ロンドンで開催した自社イベントでAzure搭載システムを発表している。さらに富士通がAzure専用のクラウドサービスを提供しているのも深い関わりがある。前述したクラウドOSを解説した本コラムで、その経緯についても記してあるので参照いただきたい。マイクロソフトの試行錯誤の過程がお分かりいただけると思う。

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