業務システムのクラウド化、成功のカギは「松・竹・梅」の見極めにありWeekly Memo(2/2 ページ)

» 2016年05月02日 17時00分 公開
[松岡功ITmedia]
前のページへ 1|2       

標準サービスを有効活用してクラウド化を押し進めよ

 なぜ、できるだけ「梅」を増やしたほうがよいのか。図2に示されているように、現在提供されている有力なパブリッククラウドサービスのほとんどが「梅」に相当するからだ。亦賀氏は「クラウドを利用するメリットは本来、標準サービスから享受できるものだ。その標準サービスの大半は梅レベルで提供されている」と言う。

Photo 図2:業務要件レベルに対応したクラウドの種類と位置付け(出典:ガートナージャパンの資料)

 従って、「梅」を増やしてクラウド化を進めれば、より多くのメリットを享受できるようになるわけだ。ちなみにクラウド化のメリットについては、2015年6月1日掲載の本コラム「あらためて問うクラウドの本質的なメリット」を参照いただきたい。実はこの記事も2015年にガートナーが開催した今回と同じテーマのフォーラムの講演で、亦賀氏が語った内容をもとに考察したものである。

 ただ、同氏は今回の仕分けの話において、「全ての業務要件を梅にしたほうがよいということではない」とも語っている。なぜならば、とりわけ基幹系システムをクラウドへ移行しようと考えると、やはり「松」あるいは「竹」レベルが必要になるケースが多いからだ。

 図2にもあるように、そうした需要に対応して日本の大手システムベンダーやシステムインテグレーターは、「松」「竹」に相当するクラウドを提供しているところが多い。つまりは、業務要件に応じて適切なレベルのクラウドを選択することも、ユーザー企業にとっては重要な判断となる。

 同氏はさらに、ベンダーがユーザー企業へクラウド提案を行う際の種類について図3を示しながら、クラウドとして妥当な範囲を説明した。この図でポイントとなるのは、「クラウドとして妥当」と「従来のSI」の分かれ目のところだ。分かれ目の両側において違うのは、赤と黒に色分けされている標準サービスの部分である。

Photo ベンダーによるクラウド提案の種類(出典:ガートナージャパンの資料)

 この違いについて同氏は、「赤の標準サービスは内容や価格が明示されているが、黒はそれらが明示されておらず、標準サービスが個別対応に埋め込まれていることを意味している」と説明したうえで、「これでは従来のSIの提案と何ら変わらない。標準サービスを適用しているのなら、ユーザーはそこの価格をベンダーに確かめて、全体としてコスト高にならないように注意を払うべきだ」と語った。

 これまで紹介した3点の図についての説明は要点だけになったが、あらためて順を追ってご覧いただければ、業務システムのクラウド化に携わっている企業のIT担当者の皆さんには、参考にしていただける部分があるのではないかと思う。筆者も亦賀氏の考え方に全く同感である。ぜひ、皆さんには効果的なクラウド化を押し進めていただきたい。

前のページへ 1|2       

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

注目のテーマ