既存の業務システムのクラウド化はどう進めればよいのか。多くの企業が悩むこの課題に対し、ガートナーのフォーラムで明快な対策を聞いたので、その内容をもとに考察してみたい。
「企業が既存の業務システムをクラウド化する際は、まずその業務要件レベルを見極めることが重要である」
こう語るのは、ガートナージャパン ガートナーリサーチ バイスプレジデント兼最上級アナリストの亦賀(またが)忠明氏だ。同社が2016年4月26〜28日の3日間、都内で開催したプライベートフォーラム「ガートナー ITインフラストラクチャ&データセンターサミット2016」で、同氏が「クラウドコンピューティング・トレンド2016(春)」と題して行った講演のひとコマである。
既存の業務システムをクラウド化する際、具体的にどのように取り組めばよいのかというのは、まさに多くの企業が今、直面している課題だ。これに対し、亦賀氏は冒頭の発言を皮切りに明快な対策を示してみせた。その内容が非常に興味深かったので、以下に要点を挙げておこう。
ちなみに、ガートナーはクラウドを「バイモーダル」で捉えるべきだとしている。バイモーダルとは、既存の業務システムのクラウド化を「モード1」、IoT(Internet of Things)によるビッグデータ活用などの新たな取り組みを「モード2」とし、まずはこれらを分けて考えることを意図している。それからすると、今回はモード1の話である。
では本題に入ろう。まず、クラウド化の検討ステップを示したのが図1である。「何を」「どこに」「どうやって」というステップで考えると、「何を」は業務システム群、「どこに」はクラウドもしくはオンプレミスとなる。肝心なのは「どうやって」の部分だが、ここで「業務システム群における個々の業務要件レベルを見極めるために、棚卸しと仕分けを行う必要がある」と同氏は説く。
具体的には図1にあるように、個々の業務要件レベルに求められる可用性の稼働率に応じて「松」「竹」「梅」といったように仕分けする。仕分けについては、セキュリティやディザスタリカバリ(DR)、業務や運用のプロセス、データの保管場所なども考慮する必要があるが、ここでは数値が明確な稼働率をもとに振り分けている。
この仕分けを行ううえで重要なポイントは、業務要件において割り切れるものは割り切って、できるだけ「梅」を増やすことである。ただ、例えば「松」が絶対に必要なものをむりやり「梅」にしてはいけない。従って、「梅」で可能な業務要件をまずピックアップしていくという仕分けの進め方が早道となる。
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