フラッシュメモリより高速で1万倍の耐久力があり、DRAMより低コストで不揮発性。それが相変化メモリ(PCM)だ。フラッシュストレージよりさらに高速なストレージが、もうすぐ登場するかもしれない。
IBMによれば、相変化メモリ(PCM:訳注)は飛躍的な進化を遂げ、コストはフラッシュに近づいたという。例えば、キャッシュやメモリとしてフラッシュやDRAMと併用することや、データベースのアクセスを高速化することも可能になる。
訳注:Phase Change Memory。相変化技術を利用した不揮発性メモリ。
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2016年5月上旬にパリで開催された「IEEE International Memory Workshop」でこの飛躍的進化のデモが行われ、IBMはトリプルレベルセル(TLC)PCMをお披露目した。このPCMはセルごとに8レベルの抵抗を判別する。それにより、各セルが1/0ビットを3状態保持できる。
IBMの研究員エバンゲロス・エレフセリウ氏によれば、PCMは読み取り速度200〜300ナノ秒、書き込み速度2〜4マイクロ秒を実現するという。現在のフラッシュストレージの読み取り速度は数百マイクロ秒単位とされるが、書き込み速度はミリ秒に近い。
フラッシュには制約があり、セルのブロック(ページ)全体を一度に書き込む必要があり、セルを消去した後でなければ書き込むことはできない。これはP/Eサイクル(書き込み/消去サイクル)と呼ばれ、フラッシュの大きな問題点となっている。これに対して、PCMは単純にセルを上書きできる。
さらに、PCMはフラッシュの1万倍に及ぶ耐久性を持つという。
マザーボードのメモリに使用されるDRAMはフラッシュより高速だが揮発性がある。つまり、電源を切るとデータが失われる。また、大容量ストレージに使用するにはコストが高過ぎる。
PCMを構成するのはゲルマニウム、アンチモン、テルルの合金だ。この合金は電圧を掛けると状態が変化する。PCMでは、結晶状態または非結晶状態への状態変化が鍵となる。
3つ以上の状態を実現する取り組み、つまりセルが保持するビット数を増やす取り組みは、結晶と非結晶の間に状態を作り出すことに基礎を置いている。だが、メモリに書き込まれた結晶状態を長期にわたって確実に安定させ、読み込み可能にすることが難しく、これが行き詰りの原因だった。
IBMはさまざまな素材の状態そのものではなく、各素材の相対的な抵抗を読み取ることでこの問題を解決した。その結果、セルごとに最大8つの状態を実現している。
では、PCMが企業システムに導入できるのはいつごろだろうか。また、どのような場所で利用されるのだろうか。
「当社は知的所有権を有し、そのライセンスをメーカーに付与する用意がある。技術的観点では問題は解決済みだ。障害はもはや存在せず、すぐにでも市場に提供できる」とエレフセリウ氏は話す。
コストの点から、当面はフラッシュより高いパフォーマンスを必要とするレイヤーで活用される可能性が高いだろう。例えば、メタデータやインメモリデータベースに使用されるストレージの高速レイヤーとして、あるいはDRAMベースメモリに対するコストの低い拡張手段として使用されると同氏は見ている。
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