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» 2016年08月19日 08時00分 UPDATE

現場に支持されるMRアプリの作り方 JALに聞く開発秘話 (1/3)

MR(Mixed Reality)技術は企業にどんな可能性をもたらすのだろうか。日本航空はMicrosoftの「HoloLens」を利用するアジア初の業務アプリのプロトタイプを開発した。同社のプロジェクトチームにその舞台裏を聞く。

[國谷武史,ITmedia]

 日本航空(JAL)は2016年4月、アジアでは初めて米Microsoftのホログラフィックコンピュータ「HoloLens」を利用する業務アプリケーションのプロトタイプを発表した(関連記事)。業務の現場が抱える課題の解決にMR(Mixed Reality=混在現実)技術を用いた取り組みだ。その開発の舞台裏をJALのプロジェクトチームに聞いた。

MRの特性を生かせる課題から

 MR技術は、現実の空間にホログラフィックの映像を重ね合わせることで、あたかもその空間の中にモノがあるかのような感覚を提供する。HoloLensは、Windows 10を搭載するヘッドマウントディスプレイ型のデバイスだ。ユーザーはHoloLensを装着すると、MRの世界が映し出される。ユーザーが体の向きを変えるとホログラフィックもそれに追従して変化し、ユーザーが手を伸ばしてホログラフィックを動かせるなど、臨場感のあるユーザー体験を実現する。

Microsoftの「HoloLens」

 JALが開発したプロトタイプは、パイロットと整備士の訓練での使用を想定したものだ。前者は、パイロットの訓練生が利用するコックピットのシミュレータの台数が足りないという課題の解決に、後者は整備士の訓練生が機体についての理解を深める機会を増やすことを目的としている。

 商品・サービス企画本部 業務部の速水孝治業務グループ長によると、元々は業務の現場が抱えるさまざまな課題の解決に新技術の活用を検討していた。その中でMicrosoftからHoloLensの利用を提案されたという。Microsoftの開発者向けカンファレンス「Build 2015」でHoloLensが発表された後の5月のことだった。

 「運航や整備、客室、空港、貨物など各部署の企画担当者が集まり、全社横断型でどのような技術が業務課題の解決に役立つのかを検討していました。当初はVR(仮想現実)やAR(拡張現実)、MRの違いを理解していたわけではなく、まずは社内の検討で候補を絞り込み、実際にMicrosoftの本社(シアトル)でHoloLensを体験して、使い道が見えてきた状況でした」(速水氏)

 検討では、例えば、乗客に提供するエンターテイメントサービスでの利用といったアイデアも出たが、機内の限られたスペースではユーザーの行動範囲に制約があるため、MRではなくVRの方が適しているのではないかといった意見が挙がったという。こうした議論を踏まえ、パイロットや整備士の訓練生の習熟度向上にMRを活用するアイデアが固まっていった。

 整備士の訓練の場合、機体の部品を全員で見ながら構造や仕組みなどを理解していくが、実際に目の当たりにできるのは機体が整備・点検する際に限られてしまう。そこで、HoloLensが映し出すMRの映像を共有しながら教官の指導を受けられるようにすれば、場所や時間の制約を受けず訓練の機会を増やせる。視線や体の動きを交えることで、整備士としての“匠”のノウハウもより体得しやすい。

整備訓練を想定して開発したアプリのホログラフィック。ボーイング787型のエンジンが細部まで再現されている(JAL資料より)

 パイロットの訓練でも同様だという。当初はMRではなくVRの利用が検討されたが、VRのバーチャル画像だけでは実感の伴う訓練が難しいという。「開発を担当したパイロットによると、知識を体で覚えるためには、疑似的にでも自分の手でスイッチを押す動作を伴う必要がありました。MRなら視界の中に自分の手の動きを重ね合わせることができるので、VRよりもMRの方が適しているというわけです」(速水氏)

パイロット訓練を想定して開発したアプリではボーイング737型機のコックピットを再現。操縦桿やスイッチなどを操作できる(JAL資料より)

 こうしたHoloLensやMR活用のアイデアが定まったのは、2015年8月頃のこと。次に、具体的にどのようなアプリケーションを実現するのかについて検討する必要があった。そこで取り入れたのが「エンビジョニング」という作業だ。

 エンビジョニングは、HoloLensやMRで実際にどのようなことを実現するのかというイメージを具体化する。JALのプロジェクトチームとMicrosoftの開発チームが4日間にわたって目標や方法、課題などについて徹底的に議論し、その際の様子やチームメンバーのコメント、最終的な成果物のイメージをビデオにした。

 JALのプロジェクトチームは、エンビジョニングで作成したビデオを経営層への提案にも活用。「プロジェクトのゴールのイメージを明確にするだけでなく、この取り組みを知ってもらうためにもエンビジョニングは、とても重要なステップでした」(速水氏)

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