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» 2016年10月19日 10時00分 UPDATE

Computer Weekly:国土の3Dマッピングで土地利用の最適化を図るシンガポールの挑戦

シンガポール政府は、国土を3Dマッピングして都市計画に生かすプロジェクトを開始した。詳細な3Dマップによって何が実現するのだろうか。

[Ai Lei Tao,Computer Weekly]
Computer Weekly

 シンガポール政府は、3D(3次元)モデルを使った最先端の都市計画を進めることを決断し、国全体の3Dマッピングを作成する国家プロジェクトに着手した。

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 その3Dモデルは、2016年6月に米サンディエゴで開催されたカンファレンス「Esri International User Conference」で披露された。モデルの生成には、高度な地理情報システム(GIS)のテクノロジーが利用されていた。

 シンガポール政府の目標は、限られた国土の利用法を最適化することだ。そこで同国政府は、シンガポール本島全体の「実世界そのままのイメージ」を視覚化したいと考えた。これは政府主導の「スマートネイション」計画の一環で、政府機関のリスク管理改善、コラボレーションの促進、意思決定の質の向上を目指したものだ。

 「シンガポール土地管理局(SLA)は、(シンガポールの)地理空間とテクノロジーの両方の限界を押し広げて、政府の『スマートネイション』施策を推進している。SLAは、シンガポール全体の3Dマッピングを進めているところで、これが完成すれば『バーチャルシンガポール』の重要な構成要素となる」と、SLA局長のタン・ブン・カイ氏は語る。「これによって地理空間データの共有と分析ができるようになるので、(国民の)センスメイキング(気付きを得る)の能力と、コンセプトのたたき台の構築と同化の能力とを向上させて、最新の複雑な課題へのソリューションの発見につなげたい」

 このプロジェクト(の成果)は、世界各地の主要都市でグローバルレベルの新しいベンチマークとなるだろうと、GISソフトウェアサプライヤー、Esri(Environmental Systems Research Institute)のシンガポール法人で代表を務めるトーマス・プラモートダム氏は語る。「『スマートネイション』計画でGISテクノロジーを活用することについても、シンガポールは世界で最も先進的な都市(の1つ)だ」と同氏は説明する。

 SLAは、従来の2D(2次元)の都市計画地図では、(現在と将来に必要な情報である)複雑な環境を完全に表現するには不適切であると認識している。これに対して3Dモデルであれば、都市の設計、構築、開発について、目的に見合った情報を正確に分かりやすく表現できる。

 例えば、3Dモデルはシンガポール島の太陽エネルギーの産出量を見積もるのに利用できる。また、建築申請されたビルが、完成時に都市の景観にどのように影響するかを見極めることもできる。

 プロジェクトではこれまでに、均質的に収集したデータからシンガポール史上最大の地理空間的データセットを構築した。そのサイズは既に100TBを超えている。

 SLAが作成した3Dモデルの(想定されている)具体的な利用法を以下に幾つか挙げる。

  • 植栽の影響分析

植栽によってできる公園内の日陰が、1日の中でどのように変化するのか。このような分析は、シンガポールの都市計画担当者が、公園の入場者の快適性を高めるため、公園内のベンチや休憩所の設置場所、アクティビティーのためのエリアなどを決定する際に役立つ。

  • 天候や植栽による気温低下の影響分析

都市開発中の区画について、シンガポールの天候のパターンと周辺の既存の植栽が、(天然のクーラーとして)気温を下げるのにどれほど役立っているかについての知見を、不動産の開発業者に提供する。この情報は、ビルのエネルギー消費量、特に冷房で消費するエネルギーを抑えるのに役立つ。

  • 景観・眺望への影響分析

新しいビルが完成すると、特定のランドマーク、観光名所、公共施設などの眺望がどう変わるか、またはどれほど遮られるかについての詳細な知見を都市計画の担当者に提供する。

  • 地下空間の活用

MRT(地下鉄)駅やショッピングモールの建設など、将来の開発を推進し、シンガポールの地下空間を有効に活用する。

  • データのリアルタイム共有

政府機関(の職員)が、「今いる場所」で移動経路の決定、ナビゲーション、現場での活動などについて、必要なデータをリアルタイムで共有できるようにする。2016年のF1レース「シンガポールグランプリ」など、大群衆が集まるイベントで特に有用だ。

  • 太陽エネルギーの産出量の見積もり

太陽エネルギーの産出量の見積もりを示して、太陽光パネルの設置に適切な場所を特定する。シンガポールは太陽エネルギーの潜在的な利用可能量が豊富な点を十分に活用し、信頼性の高い再生可能エネルギーの供給源を提供する。

 コンサルタント企業Frost & Sullivanで、アジア太平洋地域の国家政府および公共機関を担当する部門の責任者を務めるビカス・シャルマ氏は、スマートネイション計画によって構築されたシンガポールの3Dマップは、3Dによる都市計画の最先端であると認めている。

 「ここまでの規模で3D GISマッピングが導入されたのは、他に例を見ない。導入する予定があるという話すら、ほとんど聞かない」とシャルマ氏は話す。「従来、都市計画の担当者は2Dモデリングに頼ってきたが、3Dモデリングならば複雑な実世界の状況をより的確に表現できるので、設計と建築のプロセスが大いに改善されるはずだ」

 3D GISマッピングは技術的にも概念的にも大きな進歩を遂げたが、その応用についてはまだまだ課題がありそうだ。

 「国家レベルの3Dマッピングを実装するのに要した費用は微々たるものとはいえない。また、新しい業界の誕生という観点からすると、発展初期の段階につきものの問題が多々発生している状況のようだ。それでも、不動産の開発業者や都市計画の担当者など、この分野の当事者には、既存システムをアップグレードして、3Dマッピングの可能性と複雑性を利用するメリットをもっと理解してもらわなければならない」とシャルマ氏は締めくくった。

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