あなたが「WELQ」にならないために 「引用」と「盗用」の境目は半径300メートルのIT(2/2 ページ)

» 2016年12月13日 11時00分 公開
[宮田健ITmedia]
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 例えば最近、写真撮影を許可する美術館が増えていますが、それを“ネット上で公開していいかどうか”は、美術館に確認する必要があります。Webサイト上の情報も同じで、Webで公開されているからといって、それを勝手にキャプチャーしてTwitterに投稿していいとは限りません。ネット上では「画像は拾いもの」というひと言で、他人の画像を投稿している人がとても多く、こんな状況では、今回の“キュレーションサイト“問題をとても笑えません。

 今回の騒動で、「企業が悪い」「経営者が悪い」と責めるのは簡単ですが、その前に“自らの行動も律する必要がある”と思ったのです。これを機に、「他者のコンテンツの著作権を侵害してはならない」ということが、広く一般に認知されれば……と思うのです。

 ただ、ITの世界で“やっていいこと”もあります。それは「著作物の引用」。ルールさえきちんと守れば、他者のコンテンツを“引用”という形で紹介することができるのです。そのルールとは「1.きちんと公開されていて引用する必然性があるものを」「2.かぎかっこなどで明確に区別し」「3.引用範囲があくまで“従”になる正当な範囲内で」「4.オリジナルの出どころを明示する」という、4つのルールが必要です。

引用と言えるためには、[1]引用する資料等は既に公表されているものであること、[2]「公正な慣行」に合致すること(例えば、引用を行う「必然性」があることや、言語の著作物についてはカギ括弧などにより「引用部分」が明確になってくること。)、[3]報道、批評、研究などの引用の目的上「正当な範囲内」であること、(例えば、引用部分とそれ以外の部分の「主従関係」が明確であることや、引用される分量が必要最小限度の範囲内であること)、[4]出所の明示が必要なこと(複製以外はその慣行があるとき)(第48条)の要件を満たすことが必要です(第32条第1項)。


※文化庁「著作権なるほど質問箱」による引用の定義。このルールに従うことで、正しく引用が可能なこともぜひ知っておこう。

 ITの力で簡単にできるようになったことも、法律やルールに即した形で行う必要があります。まずは、“サイバー空間でやってはいけないこと“について、家族や友達と話し合ってみるのもいいかもしれません。

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著者紹介:宮田健(みやた・たけし)

デジタルの作法 『デジタルの作法』

元@ITの編集者としてセキュリティ分野を担当。現在はフリーライターとして、ITやエンターテインメント情報を追いかけている。自分の生活を変える新しいデジタルガジェットを求め、趣味と仕事を公私混同しつつ日々試行錯誤中。

筆者より:

2015年2月10日に本連載をまとめた書籍『デジタルの作法〜1億総スマホ時代のセキュリティ講座』が発売されました。

これまでの記事をスマートフォン、セキュリティ、ソーシャルメディア、クラウド&PCの4章に再構成し、新たに書き下ろしも追加しています。セキュリティに詳しくない“普通の方々”へ届くことを目的とした連載ですので、書籍の形になったのは個人的にも本当にありがたいことです。皆さんのご家族や知り合いのうち「ネットで記事を読まない方」に届けばうれしいです。


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