専門知識を多く持つ人の中には、顧客からの要求における実現可能性に疑問を持つ人も少なくありません。ツールで全ての問題を解決しようとする傾向が強く、「いつからDMPは業務負荷軽減ツールになったんだ」と毒づく声も聞いたことがあります。
自動化できるほどオペレーションも固まっていないので、既存業務との統合も兼ねたDMPへと話が膨らみ、第2回の「DMPなんて何に使うの?」で取り上げたように、必要性や効果が分かりにくくなり、話が進まなくなる恐れがあります。
「ツールに対する、顧客側の妄想が過ぎる」と愚痴を漏らすSIerの人もいましたが、その妄想を実現させる技術でシステムを作るのも、「それは今の技術ではできません」と顧客を説得するのも、SIerや広告代理店の仕事なのかもしれません。
また意外と知られていないのが、小規模で始めるDMPでできることは限られるため、「あれもこれもやりたい」と言うと、すぐにコストが高くなってしまう点です。その結果、ツール選定時にベンダーとの値引き交渉が発生してしまい、選定の大きな足かせになってしまうケースも少なくないようです。
この連載を通じて繰り返している話ではありますが、「顧客のインサイトを知るのにこの機能はマストか?」と問い続けることが重要かもしれません。客観的な立場でシステム開発を先導できるSIerならば、この視点をユーザー企業側にいつでも示せるようにしておくべきでしょう。
もちろん、今回の話はSIerだけではなく、ユーザー企業の導入担当者にも当てはまる話です。「あれもやりたい、これもやりたい」という要望が経営陣から落ちてきたら、どうすべきでしょうか。システム内製化のトレンドもありますし、導入プロジェクトをスムーズに進めるためにも、今回紹介した視点は欠かすことができないはずです。
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