“仮想と現実の一体化“はビジネスをどう変える? 「HoloLens」が日本上陸Microsoft Focus(1/2 ページ)

ヘッドマウントディスプレイ型デバイスをつけると、現実空間に3Dの物体が浮かび上がり、つまんだり動かしたり、中を見たり、操作したりできる――。2017年1月18日、そんな不思議な体験ができるHoloLensの出荷が日本で開始された。

» 2017年01月21日 14時00分 公開
[大河原克行ITmedia]

 ヘッドマウントディスプレイ型デバイスをつけると、現実空間に3Dの物体が浮かび上がり、つまんだり動かしたり、中を見たり、操作したりできる――。2017年1月18日、そんな不思議な体験ができるHoloLensの出荷が日本で開始された。

Photo 仮想と現実が一体化する世界を実現するHoloLens

 2016年11月1日〜2日にかけて開催されたMicrosoft Tech Summitにおいて、日本マイクロソフトの平野拓也社長自らがHoloLensを手にして、日本の開発者や法人ユーザー向けに提供すると発表。2016年11月には、来日した米マイクロソフトのエグゼクティブバイスプレジデント兼マイクロソフトグローバルセールスマーケティング&オペレーションズプレジデントのジャン フィリップ・クルトワ氏が同年12月2日から日本で予約受付を開始すると発表した。そしてこのほど、いよいよ正式出荷が開始されたというわけだ。

Photo HoloLensを手にする日本マイクロソフトの平野拓也社長(画像=左)とHoloLens本体(画像=右)

高い評価を得たJALのHoloLens事例

 米本社では、2016年3月末から北米において開発者限定で、「HoloLens Development Edition」の提供を開始し、8月からは「HoloLens Commercial Suite」を法人向けに提供してきた。そうした意味では、HoloLensは発表以来、米本社主導でビジネスが進められてきたわけで、日本マイクロソフトが直接、このプロジェクトに関わることはなかった。

 米本社では、これらの販売プログラムを通じて世界中の企業と個別に契約し、強い連携関係を持ちながらアプリの開発を推進。NASAやエアバス、アウディ、フォルクスワーゲン、オートデスク、ダッソーシステムなど約30社が参加企業に名を連ねた。そして唯一、日本の企業として参加していたのが日本航空(JAL)だった。

 JALとの共同プロジェクトは、アジア初、航空業界初の取り組みで、パイロットを対象に開発した「ボーイング737-800型機運航乗務員訓練生用トレーニングツール」と、整備士を対象にした「ボーイング787型用エンジン整備士訓練用ツール」にHoloLensを採用。Mixed Realityによって、リアルな環境と同じ状況を生み出し、いつでもどこでも、パイロットや整備士がトレーニングできるようにした

Photo 実物大のエンジンの周りを移動しながら眺めることができる整備士用訓練アプリのデモ

 米マイクロソフトのサティア・ナデラCEOは、2016年5月に日本で開催された開発者向けイベント「de:code 2016」の基調講演でJALの事例を紹介。さらに、2016年7月にトロントで開催されたパートナー向けイベント「Worldwide Partner Conference 2016」でも、HoloLensのデモストレーションを行った。講演では最も長い時間を割いてJALの取り組みを紹介するなど、世界的にみても先進的な取り組みであることを強調していた。

 振り返ってみると、日本マイクロソフトの平野社長がHoloLensの国内発売を発表したMicrosoft Tech Summitは、エンジニアやアーキテクトのほか、IT戦略に関わる人たちを対象にしたイベントであり、2016年9月に米アトランタで開催されたMicrosoft Igniteの内容をベースに、日本の開発者に対して、マイクロソフトの新たな方向性を示すものとなった。

 Microsoft Tech Summit基調講演の最後にHoloLensを手にした平野社長が登壇し、国内での販売開始を宣言したのは、最適なタイミングだったといえよう。

 日本マイクロソフトはMicrosoft Tech Summitで、HoloLensの実物を国内で初めて展示。さらに、HoloLensのスペシャルセッションを展開して、「Mixed Realityとは何か」「HoloLensによってどんな世界が実現するのか」を紹介した。

 平野社長は、「HoloLensは世界初の自己完結型ホログラフィックコンピュータであり、Mixed Realityの世界を実現する。Mixed Realityは、AIやBotなどとともに、マイクロソフトが現在、投資を加速している最注力分野の1つである」と前置きし、「現実の目の前の世界と、3Dのホログラフィックの世界を融合させたMixed Realityは、これまでにない新たなデジタル体験やコラボレーション、働き方の可能性を一気に広げる」と、HoloLensがもたらすインパクトを強調した。

Photo 日本マイクロソフトでは、医療や建設、コミュニケーション、エンターテインメントなど、幅広い活用を想定している
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