業界初の商用利用可能な汎用量子コンピューティングシステム「IBM Q」をクラウドサービスとして提供。併せて量子コンピュータプラットフォームの新APIとシミュレーターも発表した。
米IBMは3月6日(米国時間)、商用利用可能な汎用量子コンピューティングシステム「IBM Q」をクラウドプラットフォームを通じて提供すると発表した。
IBM Qは、従来型コンピューティングシステムで対処するには難しい、複雑で指数関数的に拡大するような問題に対処できるように設計されたという。量子コンピュータの処理能力は、量子ビットの数、量子演算の品質、量子ビットの接続性、並列処理などが含まれる「量子体積」で表される。同社では、IBM Qの量子体積を増強するための最初のステップとして、今後数年間で商用としては最大の50qubit(キュービット:量子ビット)のシステムを構築し、従来型システムを超える能力を実証するとしている。さらにパートナーと協力し、量子コンピューティングによるシステムの高速化を生かすアプリケーションの開発も計画している。
量子コンピューティングの活用について同社は、まず化学分野を見込む。例えばカフェインのような単純な分子でも、分子の量子状態数は膨大となる。そうした化学の問題に関するシミュレーションを量子プロセッサ上で効率的に行う技術開発を進め、さまざまな分子における実証実験も進行中だ。将来的にはより複雑な分子構造に対応し、従来型コンピュータより高精度で化学的性質を予測することを目標としている。
さらに応用例として、以下のようなものを挙げている。
また同時に、「IBM Quantum Experience」の新APIを発表した。IBM Quantum Experienceは、実験的に量子コンピュータを利用できるプラットフォーム。新APIによって、量子物理学の深い知識がなくても5qubitの量子コンピュータと従来型コンピュータ間のインタフェースを構築できるという。
さらに、IBM Quantum Experienceのシミュレーターもアップグレードし、最大20qubitで構成される回路をモデル化できるとのこと。2017年上半期にIBM Quantum ExperienceのSDKのリリースも計画しており、ユーザーが簡単な量子アプリケーションやソフトウェアプログラムを作成できるようにする。
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