NTTコミュニケーションズがクラウド事業で新たな方向性を打ち出した。競合と真っ向からぶつかるのではなく、通信会社らしく「つなぐ」ことを前面に押し出したものだ。果たしてその真意やいかに――。
「企業システムのクラウド化ニーズは高まってきているが、一方で、いったんクラウドに上げてみたものの、オンプレミスに戻すケースも見受けられるようになってきた。どうやらオールクラウド化だけが唯一無二の正解ではなく、オンプレミスとクラウドのハイブリッド利用がこれからの中心になるのではないか」
NTTコミュニケーションズ(NTT Com)の庄司哲也社長は、同社が4月11日に開いたサービス事業戦略の記者説明会で、開口一番こう語った。
なぜ、クラウドからオンプレミスに戻す動きが起きているのか。庄司氏は、「パフォーマンスやコスト面で期待した効果が見込めない」「データベースがクラウド化できない」「まずはオンプレミス環境を効率化する必要がある」といった声を聞いていると説明した。
さらに、「ハイブリッド利用とともに、マルチクラウド利用のニーズも高まってきている。とりわけ、業務ごとにそれぞれ気に入ったSaaSのサービスを使いたいという要望に応えることが必要になってきている」とも話し、NTT Comは今後、クラウド事業において「ハイブリッド利用」や「マルチクラウド利用」およびそのマネジメントやセキュリティに注力していくことを強調した。
実は、同社はこうした方向性を以前から明確に打ち出していたわけではない。これまでも要素としては挙げていたが、それよりもグローバルなメガクラウドベンダーとして、Amazon Web Services(AWS)やMicrosoftといった競合と真っ向から渡り合っていく戦略を一番に挙げていた印象が強い。
その戦略については、2016年4月18日掲載の本コラム「NTT Comはクラウド市場で“ITジャイアント”に勝てるのか」を、また同社の主力サービスである「Enterprise Cloud」については、2016年3月7日掲載の本コラム「パブリックとプライベートを“いいとこ取り”したクラウド戦略の行方」をご覧いただきたい。
では、同社はハイブリッド利用やマルチクラウド利用のニーズの高まりにどう対応していくのか。庄司氏は、「高信頼・高品質なインフラストラクチャの追求」と「SDx+Mの強化」の2点を挙げた。
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