NTT Com、Dell EMC陣営と協業 SAPユーザーのクラウド化需要を取り込む

NTTコミュニケーションズがEMCジャパン、Virtustreamとクラウドサービスで協業する。SAPなど基幹系業務システムのクラウド化を検討する企業ニーズの獲得を狙う。

» 2017年02月06日 18時54分 公開
[國谷武史ITmedia]

 NTTコミュニケーションズ(NTT Com)とEMCジャパン、米Virtustreamは2月6日、国内クラウド市場の拡大に向けた戦略的協業での合意を発表した。Virtustreamの技術を利用した基幹系業務システムのクラウド構築や関連サービスを国内で展開する。

協業で打ち出す3社の特色

 協業では、NTT ComがVirtustreamと共同で、SAPシステムのクラウド化に対応する新サービスをNTT Comの「Enterprise Cloud」として提供する。またVirtustreamは、NTT Comのデータセンターを利用した独自のクラウドサービスを国内外に提供(海外からは「日本リージョン」として利用可能になる)し、デルとEMCジャパンが国内企業向けに販売する。

 Virtustreamは2009年に設立され、クラウド基盤管理ソフト「xStream Cloud Management」や、IssSサービス「Virtustream Enterprise Cloud」、ストレージサービスの「Virtustream Storage Cloud」などの開発・提供を手掛ける。2015年にEMCが買収したが、Dell EMCの発足に伴って現在はDell EMCグループの独立企業として運営されている。

 Virtustreamとの提携についてNTT Com 取締役 クラウドサービス部長の森林正彰氏は、「欧米ではVirtustreamがクラウドで稼働するSAPシステムの基盤として多数採用されていることや、同社の『μVM』技術を利用することで共有型の環境でも高信頼のサービスを安価に提供できるため」と説明した。

NTT Comが協業で新たに提供するサービスと既存サービスとの関係

 Enterprise Cloudで提供する新サービスについて同社は、SDN(ソフトウェアデファインドネットワーク)を活用して既存サービスとの容易な連携や、ネットワーク運用を含めたフルマネージドサービスとしての使いやすさ、関東と関西のデータセンターによるディザスタリカバリ対策やコンプライアンス要件への対応が特徴だとしている。これらは2017年春の提供開始を予定し、将来的に海外での提供・販売も視野に入れる。

 Virtustream 最高執行責任者(COO)のサイモン・ウォルシュ氏によると、同社のμVM技術は、サーバやストレージ、ネットワークなどのクラウドリソースの使用状況を高い精度で把握したり、制御したりできるほか、基幹系システムに求められる高い可用性やパフォーマンスの実現に強みがあるという。ユーザーがシステムインフラを効率的に運用することで、約3割のコストを削減できるとしており、欧米ではクラウドで稼働するSAPシステムの約6割に採用されていると説明した。

VirtustreamがNTT Comのデータセンターを利用して提供する予定のストレージサービス

 NTT Comとの協業について同社は、μVM技術などの提供にとどまらず、Virtustream Enterprise CloudやVirtustream Storage Cloudの日本リージョンのサービスを海外企業に提供できる点がメリットだという。これらサービスは既に世界20拠点で提供しているという。

 EMCジャパン 社長の大塚俊彦氏は、「クラウドにおける3社の『最新鋭』の組み合わせといえる枠組み。ミッションクリティカルなエンタープライズシステムのクラウド化に大きく貢献していきたい」と抱負を述べた。

協業を発表したEMCジャパンの大塚社長、NTT Comの森林取締役、VirtustreamのウォルシュCOO(写真左から)

 記者会見後の質疑応答で協業の背景について答えた森林氏は、「従来サービスでもSAPシステムのクラウド化は可能だが、実際にはSI案件の獲得で負けていた。欧米で実績あるVirtustreamを組むことで、ユーザーニーズに応えられる」とコメント。また、「ネットワークやデータセンターも持つクラウドサービス事業者は少なく、このユニークな立ち位置がNTT Comの強み」と競合優位性をアピールした。

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