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» 2017年06月15日 11時00分 UPDATE

ITソリューション塾:なぜ日本企業はSFAやERPをうまく使いこなせないのか (1/2)

SFAやERPを導入したものの、有効に使いこなせていないとしたら、日本企業ならではの思想や文化の違いが関係しているのかもしれません。

[斎藤昌義(ネットコマース株式会社),ITmedia]

思想や文化が違えば、必要とされる機能も違う

 欧米の経営者と従業員の関係は、羊飼いと羊の関係に似ている。

 彼らは、何百頭、時には何千頭の膨大な数の羊たちを効率よく統制し、牧草の生い茂る場所を巡回して、羊たちを育ててきた。その仕組みをうまく動かすためには、組織を階層化して、指揮命令系統を1つにした中央集権型の組織を作る必要があった。また、現場の末端に至るまで、迅速、正確に情報を把握する術を必要とした。その伝統が、企業や国家の経営の根底にある。

 また、米国では「横へのキャリアパス」が受け入れられている。横へのキャリアパスとは、“ある会社で経験を積み、スキルを身に付け、他の会社へ転職して、さらに高い地位を手に入れる”というキャリアの作り方だ。米国ではそれが当然のことであり、むしろ高く評価される傾向にある。

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 従って、社員は高い報酬と地位を得るために会社に尽くす一方で、その機会が満たされなくなれば、いつでも他の会社に移り、さらに高い地位と報酬を求める。経営者もそれを承知しており、きめ細かく徹底した管理を行う。業務プロセスをリアルタイムで把握し、適正に業務を行っており、併せて会社への不正や不利益が生じないかどうかなどを組織の末端まで監視しなくてはならない。

 SFA(Sales Force Automation)やERP(Enterprise Resource Planning)は、このような欧米文化を背景に生まれてきたITソリューションだ。つまり、営業や業務の末端を徹底して見える化し、経営者が現場を統制するとともに、適切な指揮命令を迅速に行うために作られたものなのだ。

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 一方、日本はどうか。日本では「横へのキャリアパス」はあまり快く思われていない。昔ほどではないにしても、「同じ会社の中で出世していくことが正しいキャリアパス」と考えられている。そのため従業員は、一生勤め上げる会社をわが家のように考え、会社のために貢献することを当然と考える。その一方で、キャリアアップを図るには大きな失敗は許されない。何事も「ミニマムスタート」で“リスクを最小限に抑え、失敗を許さず、小さな成功を積み上げてキャリアアップしていく”企業文化だ。

 経営者は、そんな社員を信頼している。だから現場が「使えない」というものを、経営者は無理やり使わせることはできない。「現場の判断にまかせる」ことを大切にする傾向にある。そのため、欧米のような絶対的主従関係は育ちにくい。

 このような思想的背景の違いがあるにもかかわらず、欧米方式の製品をそのまま現場に持っていくと、「こんな帳票や操作画面じゃ使えない」と反発にあう。「ならば現場に使えるように」と、業務プロセスに対応させるべく、徹底したカスタマイズを許容する。欧米ではあまりないことだ。

 これは、「現場の主体性に大きく依存し、現場を信頼する」日本と、「現場は管理・統制の対象と考える」欧米との組織に対する考え方の違いだ。どちらが優れているかといった優劣の問題ではない。歴史的伝統に裏打ちされた思想の違いだ。ただ、この違いを理解せず、システムの選定を進めることは、結果として失敗を招くことになる。

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