ネイティブアプリの時代が終わる? Appleが「PWA」対応を決めたわけMostly Harmless(1/2 ページ)

AppleがiOS/macOSのPWA対応に動き出し、Google、Microsoft、Appleの足並みがそろったことで、今後PWAが標準技術になっていくことがほぼ確実となった。ただ、Appleのこれまでの収益モデルはPWAによって変化を余儀なくされる。Appleの戦略転換の狙いとは?

» 2018年02月26日 08時00分 公開
[大越章司ITmedia]

この記事は大越章司氏のブログ「Mostly Harmless」より転載、編集しています。


 2018年の2月に入って、PWA(Progressive Web Apps)についていくつか大きな動きがありました。PWAは、HTML5の限界を突破するためにGoogleが推進しているクライアント(ブラウザ)側の高機能化技術で、Webアプリにネイティブアプリ並の操作性や表現力を持たせようとするものです。

 以前、PWAについて書いた記事の中で、

AppleにはAppleの事情があり、「はいそうですか」とはいかない部分もある

と書きましたが、どうやらAppleはmacOSとiOSの「Safari」でPWAをサポートする方向になったようです。

 Microsoftは、その前の週にPWAを「Windows 10」で“ネイティブに”採用することを発表しています。

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 Google、Microsoft、Appleの足並みがそろったことで、今後PWAがクライアント側の標準技術になっていくことは、ほぼ間違いないでしょう。

 実際にPWAを使って高速化を達成した事例も、出てきています。

MicrosoftはOS非独占時代への布石として

 個人的には、MicrosoftがPWAのサポートを表明したことには違和感は覚えません。MicrosoftはナデラCEOのもと、数年前からオープン戦略に転換しており、今回のPWAサポートもその流れでしょう。

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 先のPublickeyの記事にもあるように、Microsoftは「Windows 10をPWAにとって最も魅力的なプラットフォームへと進化させようとしている」のではないでしょうか。OSで稼げなくなる時代を冷静に見据えた戦略といえるでしょう。

 “ネイティブに”というのは、ブラウザだけでなく、デスクトップなどにもWebコンテンツを表示できるということです。

 デスクトップにHTMLコンテンツを表示するのって、昔もありましたよね。「Active Desktop」を覚えていますか? 今調べたところ、「Windows 95」の時代からあるようで、「Windows XP」までサポートされていました。壁紙に天気予報やニュースが表示され、リアルタイムに更新されるのです。うっとうしいので速攻で表示をオフにした覚えがありますが(笑)。

AppleのPWA採用は、これまでの戦略を転換するものなのか?

 冒頭に紹介した以前の記事を書いたときには、AppleがPWAを採用するかどうかは不透明、という状況でした。ネイティブアプリを提供する「App Store」は大きな収益を上げていますし、Appleはプラットフォームを完全なコントロール下に置きたいと考えています。

 PWAによってWebアプリが高機能化すると、ネイティブアプリがWebアプリに置き換えられてしまいます。Webアプリだと、App Storeのようなコントロールは効かず、課金の仕組みも使えません。

 それでもPWAの採用に至ったのには、3つの理由があると思います。1つは、「プラットフォームのオープン化の波は押しとどめられない」と考えたのではないかということ、もう1つは、「Macとのアプリ共通化」、そして最後に、「『Apple Pay』による課金に見通しが立ったため」ではないかということです。

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