財布はいらない、支払いは「手のひら」で LOTTE Cardが目指す買い物の未来とは?富士通フォーラム2018(1/2 ページ)

手のひらをスキャナーにかざせば、本人認証やクレジットカード決済ができるサービスが、韓国のセブンイレブンなどで始まっている。LOTTE Cardは、富士通の手のひら静脈認証装置「PalmSecure」を導入して同システムを開発したという。

» 2018年05月28日 13時00分 公開
[高木理紗ITmedia]

 手のひらをスキャナーにかざせば、本人認証やクレジットカード決済ができる「HandPay 決済サービス(以下、HandPay)」が、韓国のセブンイレブンなどで2017年5月から始まっている。同サービスを発表したのは、ロッテグループ傘下のクレジットカード会社LOTTE Card。富士通の手のひら静脈認証装置「PalmSecure」を導入し、顧客の生体情報をクレジットカード情報とひもづけることで、“手ぶら”の決済システムを実現した。

画像 「HandPay 決済サービス」のイメージ画像

 HandPayを利用する顧客は、あらかじめLOTTE Cardが運営するサービス店舗「LOTTE Cardセンター」で携帯電話の番号と生体情報を登録。LOTTE Cardは、PalmSecureを使ってそれらの情報を暗号化した上で、情報流出のリスク低減策として、データを分割し、韓国金融決済院(KTFC)と自社でそれぞれ保管する。

 HandPayの加盟店で顧客が携帯電話番号を入力し、手のひらをスキャナーにかざすと、それらの情報をLOTTE Cardが受け取り、KTFCが持つ顧客の情報を合わせたものと突き合わせて認証する。認証が成功すれば、同社が保管する顧客のクレジットカード情報を加盟店に送り、決済が成立する仕組みだ。

画像 HandPayを使った決済の仕組み

なぜ「静脈認証」が決済に有効なのか

 Fintechの普及に力を入れる韓国で、LOTTE Cardが手のひら静脈認証に注目した理由はどこにあるのか。同社デジタルペイメントチームのシム・グンボ(Sim Geun-bo)シニアアシスタントは、富士通の年次イベント「富士通フォーラム2018」で「顧客にとって最も便利な決済方法を追求した結果、現金もカードも不要で、かつ盗難や偽造のリスクが限りなく低い、静脈認証に行き着いた」と語った。

 PalmSecureは、人間の静脈を流れる還元ヘモグロビンが、近赤外線を吸収すると黒く映し出される特性を利用し、利用者の静脈パターンを認識する。静脈認証には「指紋や顔と比べて偽造が非常に困難」というメリットがある。類似したパターンを持つ人が非常に少ないため、対象者を他人と間違えてしまう確率は0.00001%(1千万人に1人)程度だという。富士通 パームソリューション推進統括部の森樹久マネージャーは、「指紋と違い、スキャナーにかざすだけの非接触型認証なので、衛生的にも利用者側に受け入れられやすく、消費者向けサービスとの親和性が高い」と話す。

画像 富士通「PalmSecure」の説明スライド

 モバイル決済にSamsung ElectronicsやAppleが指紋認証を導入するなど、韓国の消費者にとって生体認証が身近になり始めたことで、LOTTE Cardでは「他社に先駆けた決済サービスを始めたい」と静脈認証の導入を検討。「多くの国で生体認証の導入実績があり、認証のスピードや精度が高かった(シム氏)」ことから、PalmSecureの導入を決めたという。

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