デジタル化の進展に伴って金融機関はどのように変わっていくのか。10年後、銀行はどんな姿になっているのか――。富士通の記者説明会で語られた今後の動向を紹介しよう。
富士通が先ごろ、金融機関のデジタル化の動向と、この分野での同社のビジネス展開について記者説明会を開いた。特にデジタル金融の動向における図解での説明が非常に分かりやすかったので、それらの図を挙げながら筆者の考察も交えて紹介したい。
まず、図1は金融機能とICTにおいて、左側が従来、右側がこれからの在り方を示したものである。比較すれば違いは一目瞭然だが、最大のポイントはICTの提供領域で、従来が「効率的な金融仲介」なのに対し、これからは「金融仲介だけでなく新しい価値を生み出す」としている点だ。
図2は、金融機関がデジタル化する中での競合環境の変化を示したものである。中央のモノクロで描かれた伝統的金融機関に対し、左から「GAFA」(Google、Apple、Facebook、Amazon)と呼ばれる巨大IT企業やFintech企業、右から流通事業者などが競合として押し寄せてくるという構図だ。
会見で説明に立った富士通総研の隈本正寛コンサルティング本部金融グループ長は、「金融業界はデジタル化の進展とともに競合環境が大きく変わっていくことをしっかりと認識しておく必要がある」と指摘した。
図3は、金融業界のアンバンドリングの進展と新たなビジネスモデルについて説明したものである。左の伝統的金融機関では、融資や預金、決済といった金融機能がセットで提供されてきたが、中央の新しいビジネスモデルでは個別にAPIでやりとりされるようになる。これをアンバンドリングの進展と捉えているようだ。
そして、金融業界はこれから図3の右にあるように、3つの変革が起きるとしている。1つ目は「実体経済への浸透」。金融サービスは、例えばスマートフォンによる商取引において必要な機能単位でサービスが提供され、利用者にとってシームレスでワンストップな顧客体験が提供されるようになる。
2つ目は「銀行業務の自動化」。AIやRPAによって従来、行員が行っていた業務プロセスの多くがITに代替され、新たなビジネス拡大が可能となる。3つ目は「銀行の情報産業化」。クラウド上から金融機能を提供し、Fintech企業などの外部サービスに対して、APIを介した金融機能(データやサービス)へのアクセスを可能とする銀行機能のプラットフォーム化が進展するとしている。
この3つの変革は、まさしく銀行のデジタルトランスフォーメーション(DX)である。
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