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» 2018年11月05日 10時00分 公開

情シスの相棒は総務だった!? 会社を救う最強タッグ(4):Excel勤怠管理からの脱出――人事の専門家がグループウェアで進めた「働き方改革」

ツールの導入が目的になってしまい、運用で破綻してしまう――IT導入のよくある失敗例だ。特に「働き方改革」ではこの傾向が強く表れる。プラントエンジニアリングを手掛ける「東洋ハイテック」では、人事の専門家がシステム導入を先導する珍しい体制で、この問題を突破している。

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シリーズ:情シスの相棒は総務だった!? 会社を救う最強タッグ

 ITのコモディティ化により、情報システム部門に求められる役割が、ビジネスへの貢献や社員の業務改善といった方向へとシフトしています。このシリーズでは、情シスと現場、特に全社とのつながりを持つ総務とがタッグを組むことで、会社を変えるだけの力が生まれる――そんな事例を紹介していきます。

 昨今、国を挙げた取り組みとして注目を浴びている「働き方改革」。生産性向上や従業員満足度の向上をうたい、コミュニケーションツールやテレワークといったソリューションの導入を検討する企業も少なくない。

 こうしたIT導入における“ありがちなミス”として、ツールの導入そのものが目的になってしまうことが挙げられる。働き方改革のように、人間(従業員)の行動と密接に結び付く課題においては、ITの導入だけでは解決しないケースがほとんどだ。

 インスタントコーヒーから医薬品、果ては二次電池といった“粉体”に特化した製造プラント(工場など)の建造などを手掛ける「東洋ハイテック」も、急ピッチで働き方改革を進める企業の1つ。昨今はプラントの図面データの電子化や、RPAによる業務効率化などにも着手しているとのことだが、それ以上に「とにかく労務管理がしにくい」という大きな課題があった。

photo 東洋ハイテックは“粉体”に特化した、製造プラントの建造などを手掛ける企業だ

労務時間をExcelベースのシステムに毎日手入力……どうにかならないか?

photo 東洋ハイテック 管理本部長の山田剛秀さん

 同社の働き方改革を中心になって進めているのは、管理本部長の山田剛秀さんだ。管理本部は総務や人事、経理や法務、広報や情報システムといったバックオフィス業務を束ねているという。総務・人事業務を専門としてキャリアを積み重ね、現在は自身が育児休暇を取得する準備を進めている山田さんだが、3年前に東洋ハイテックに転職してきた当時は、労務管理の状況に大きな課題を感じたという。

 「お客さまのところに製造プラントを作りに行くとなると、半年や1年がかりで自社のオフィスに出勤できないエンジニアも珍しくありません。営業もお客さまの工場は当社から遠く離れた場所にあることも多いため、なかなかオフィスに帰ってこられない。事業の性格上、労働の実態が非常に把握しにくく、勤務のパターンも数多くあるため、ルールの整備がなかなか追い付いていなかったのです」(山田さん)

 一口に勤怠のルールと言っても、労働時間の定義から出張時における時間の認識、法律の解釈と幅広く、これらをシステム上で解決するのはなかなか困難だ。同社はこれまで勤怠を社員各自がExcelベースのシステムに手入力していた。しかし、ルールが整備されていないため、開始時刻も終了時刻も自己申告で、どこまでが仕事であるかといった管理ができているとは言い難い状況だった。

 「自己申告となると、日本人は気を遣ってしまいがちです。会社から帰れと言われていても、PCを持ち帰って家で仕事をする人や実態と異なる申告をする人もでてきます。会社としてはそういうやり方はなくしたい。事前に承認された作業しか労働として認めないという規定にすれば、家での作業は“なかったこと”にもできますが、それでは従業員は幸せにはなれません。

 会社は『残業を減らせ』と言うけれど、一方でお客さまへの納期は守らないといけない。そんな状況だからこそ、自己申告ではなく、客観的で明確な指標を作り、正しい現状把握をすること。それが長時間労働を解決していくための第一歩だと考えています」(山田さん)

 そこで山田さんは、労務実態の把握から始め、規定の改定をはじめとして労務管理の仕組みを全て作り直していった。仕組みを考える中で、「勤務管理のさまざまなパターンをルール化し、複雑にして管理工数を増加させるのではなく、システム化によってルールを効率的に回したい」と思うようになり、勤怠管理システム刷新の検討を始めた。しかし、現行のシステムに大きな不備はなく、従業員もその操作に慣れていたことから、なかなか企画は進まなかった。

 「弊社では、スケジュールやワークフローにサイボウズの『Garoon』を使っています。例えば出張するときは、ワークフローで上司から承認をもらい、その勤務予定や実績をExcelのシステムに入力。その後、同僚と予定共有のために、Garoonのスケジュールにまたその時間を入力する……と3回も入力が必要でした。管理面も含め、この点を改善できないかと課題に感じていたのです」(山田さん)

サイボウズ Garoonと勤怠システムを連携させる!

 2017年の冬、そんな山田さんに転機が訪れる。全社員が使う携帯電話がフィーチャーフォン(ガラケー)からスマートフォンに変わったのだ。「生産性向上を目指す」という社長の意向もあり、スマートデバイスを活用した業務改革を進めていたが、Excelベースの勤怠管理システムは、スマートフォンの小さな画面で扱えるようなものではなかった。

 スマートフォン1台で業務を回すなら、勤怠管理もスマートフォンで扱いやすいグループウェアに統合するべきだ――山田さんはそう考え、グループウェアと勤怠システムが連携するシステムを探したが、その選択肢は思いのほか少なかったという。

 「スケジュールと勤怠って密接に関わるものなのに、その2つが連携できるシステムが少ないっていうのは悲しい話ですよね。『ないなら作るしかない』と考えまして、Garoonと連携できる勤怠ソリューションを見つけたこともあり、カスタマイズすることにしたんです」(山田さん)

photo Garoonと連携した勤怠システムの画面

 度重なる改善や軌道修正を経て、2018年5月にはシステムが完成。Garoon上で勤務開始と終了の打刻を行うようにし、外出先でもスマートフォンで打刻ができるようにした。これまで自己申告に等しかった勤務時間を、客観的に管理できるようになったのだ。GPSを使って打刻時の位置情報も取得しているため、出先での不正も行えないようにしているという。

 出張時は、ワークフローで出張申請を出し、それが承認されれば、自動的にスケジュールに反映され、そのデータは勤怠管理システムにも反映される。これまで行っていた3回のデータ入力が1回で済むようになったというわけだ。

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 しかし、その移行はスムーズに進んだわけではない。テスト運用を一部の部署で始めたところ、ユーザーからは想定もしていなかったようなフィードバックがどんどん飛んできたという。細かな部分で業務の実態とシステムが合わない部分が出てきたためだ。

人事システムは、ルールと運用が「表裏一体」

 例えば、同社の始業は9時だが、毎日オフィスに8時過ぎには到着しているAさんは、何時に打刻をするのが正しいのか。打刻をした瞬間から業務を始めなくてはならないのか。18時の終業時刻を15分過ぎてオフィスを出たBさんは、残業申請を出すべきだったのか。これはサービス残業になってしまうのか……。これまで従業員の“忖度(そんたく)”であいまいにされていた部分が、システム化されたことにより、さまざまなケースで白黒をつける必要が出てきたという。

 「残業をどの単位でカウントするか、打刻をするところからが業務なのか、ウチは技術系の人が多く、細かな点まで理論的な説明を求める人も少なくありませんでした。システム会社の方も、こういう質問は想定していなかったようですが、確かにルール化するのであれば、こういった点についても回答を用意しておく必要があります。

 そしてそれらを『どうプログラムで解決するか』ということも意識しなくてはいけません。もちろん、システム会社の方も協力してくれますが、こちら側がある程度プログラム的な思考ができないと構築が難しい。ルールを作っても、それをプログラムで実現できなければ意味がない。例外が増えれば、それだけ開発費用に響いてしまう……ルールをどう解釈すればプログラムに当てはめられるかを考える。私としては、とても面白い仕事だったんですけどね(笑)」(山田さん)

photo Garoonのスペース上で、勤怠システムについてSIerとやりとりをしている様子

 正式稼働後も社員一人ひとりの要望を聞き、細かくシステムを改善していったため、落ち着くまでに2〜3カ月かかったという。

 開発と運用がほぼ一体となって、素早く改善を繰り返していった東洋ハイテック。情シスと人事が別部署になっている会社の場合、なかなかここまでのスピード感は生まれないだろう。人事として労働の実態を理解していながら、理系出身でプロジェクトマネジメント業務を任されることが多かったという山田さんの経歴が、プロジェクトの成功に寄与した部分は大きいのではないか。

 もともと社員がGaroonを使いこなしていたこともあり、今では「前の勤怠管理システムの方が良かった」といった声はなくなってきているそうだ。

さまざまなシステムをグループウェアに統合し、脱Excelへ

 勤怠管理システムをGaroonに“統合”した今、その他のシステムもグループウェアに統合できないか、と山田さんは考えているという。

 「今後は、タレントマネジメントのような仕組みも作りたいと考えています。例えば研修の受講申請もGaroonのワークフローで行っているので、そのデータを人事のデータベースとして持っておけば、誰がどのようなスキルを持っているか、学んでいるかということがすぐに分かるようになるはずです。

 あとは経理面ですね。旅費の精算などもGaroonのワークフローを使っているので、データがあれば自動化ができるはず。今はExcelで入力して確認……というフローなので。なるべくグループウェアにシステムを統合していくことで、Excel業務をなくしていきたいんですよ」(山田さん)

 あんなことができたらいい、こんなことができたら面白い。山田さんは常にそういった企画を考えている。新しい技術やソリューションに出会った際に、業務にどう生かせるかというアイデアが浮かぶようにするためだ。「単に仕組みを作るのが好きなだけですけどね」と山田さんは笑う。

photo 東洋ハイテックにおける働き方改革の全貌

 「中小企業こそ、いかにITを効率よく使っていくかを考えなければいけません。独立系の会社なので、その効果を認めてもらえれば、実現はしやすい環境だと思います。常にアイデアをいろいろ持ちながら、トラブルを解決したり、構想を社長に相談したり。その繰り返しですね」(山田さん)

 ITはあくまでビジネスや業務を変える「手段」にすぎない。企業ITに携わる人であれば、当たり前だと思うかもしれないが、手段と目的を履き違えた状態でシステムを導入してしまう悲劇は少なからずあるのが現実だ。

 IT“だけ”では課題は解決しない。単純な話だが、情報システム部門の視点だけでは、それに気付けないこともある。総務という立場から、現場の業務に向き合い続け、プログラムを意識した運用までを見据えてITを活用する――そんな山田さんのような「総務系情シス」が、働き方改革には必要な存在なのだろう。

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提供:サイボウズ株式会社
アイティメディア営業企画/制作:ITmedia エンタープライズ編集部/掲載内容有効期限:2018年12月4日