NEC製AIが開発、“バブル崩壊味”のチョコレートを実際に食べてみたエンプラこぼれ話(1/3 ページ)

「人類初の月面着陸」「オイルショックの混迷」「魅惑のバブル絶頂」「絶望のバブル崩壊」――NECが昭和や平成のさまざまな思い出を、AIを使ってチョコレートにした……とのことだが、何だか意味が分からない。試食できる機会があったので、実際に食べてみた。

» 2018年11月05日 07時00分 公開
[高木理紗ITmedia]

 突然だが、皆さんの中に、1970年代の「オイルショック」や1990年代の「バブル崩壊」を実際に味わった人はどれくらいいるだろうか? こうした出来事のあった「年」を自分の舌で味わえるチョコレートをNECが開発したという。しかも、その味を決めたのは、人ではなく人工知能(AI)だというのだ。とはいえ、一体どんな味なのか想像もつかない。都内で試食会を開くというので、実際に行ってみた。

 試食会で記者を待っていたのは、「1969 人類初の月面着陸味」「1974 オイルショックの混迷味」「1987 魅惑のバブル絶頂味」「1991 絶望のバブル崩壊味」「2017 イノベーションの夜明け味」の5種類。それぞれ板チョコとしてオンラインストアで予約を開始しており、5つの味をアソートしたボックスを含めて2018年12月21日に発売予定だ。ちなみに価格は1枚1620円(税込)。そこらの高級チョコレートよりも高い、これがAIの力なのか……?

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 実際に試食してみると、「1969 人類初の月面着陸味」は、最初にフルーティーな香りが広がり、その後から苦味と甘味、酸味がやってくる華やかな味だ。一方、さらに甘味と花のような香りが弾ける「1987 魅惑のバブル絶頂味」の後に、「1991 絶望のバブル崩壊味」を口にすると、カカオ独特の重い香りの後に、刺すような酸味と苦味が襲ってくる。これが経済の頂点からどん底にたたき落された絶望の味か……と言っても、記者はその頃まだ3歳。全く当時を思い出せない。

photo 実際に試食会に登場したチョコレート。左から右へ、「1969 人類初の月面着陸味」「1974 オイルショックの混迷味」「1987 魅惑のバブル絶頂味」「1991 絶望のバブル崩壊味」「2017 イノベーションの夜明け味」の5種類だ

 1粒ごとに目を白黒させながら、記者はふと思った。味の変化はよく分かる(そしてどれもおいしい)。けれど、そもそも誰がなぜこれをチョコレートにしようと思ったのだろうか?

NECのAIは、チョコレートの味をどうやって決めたのか?

 「チョコレートを通して、ある『年』を味わうことで、若い世代や年配の世代が時間を超えてその時代を思い出し、想像し、あるいは互いに会話のきっかけにできるような体験を提供したかった」と語るのは、NECで今回のプロジェクト「あの頃はCHOCOLATE」を担当したAIエバンジェリストの茂木崇さんだ。

photo NECで「あの頃はCHOCOLATE」を担当したAIエバンジェリストの茂木崇さん(左)と、ダンデライオン・チョコレートで制作に関わった伴野智映子さん(右)

 同プロジェクトは、NECがAIソリューション群「NEC the WISE」を使って「味」をテーマに進めるコラボレーションの第2弾。今回はサンフランシスコ発祥のチョコレート専門店、ダンデライオン・チョコレート・ジャパン(以下、ダンデライオン・チョコレート)とコラボし、5つの年の味をチョコレートで再現した。ちなみに第1弾では「飲める文学」と題し、夏目漱石の『こころ』や太宰治の『人間失格』などの作品を表現したコーヒー豆を発表している。

 「時間を超えてその時代を思い出す」というコンセプトだが、そのほとんどは記者が知らないものばかり。これはもしや、酸いも甘いも体験したオジサン世代をターゲットにした企画なのでは……と思ったが、茂木さんからは意外な答えが返ってきた。

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