音楽ケータイ成功の鍵は、“イヤホンニーズ”の演出にあり神尾寿の時事日想

» 2005年03月10日 10時58分 公開
[神尾寿,ITmedia]

 最近、原宿や渋谷の街を歩くと、白いイヤホンをつけた人をよく見かける。言わずとしれた「iPodのイヤホン」である。北米ではブームを超えて社会現象にまでなっているiPodだが、日本でもトレードマークの白いイヤホンも含めて、認知度が急激に上がっているようだ。

 一方で、街中で携帯電話にイヤホンをつけている人は、まったくといっていいほど見かけない。au、そしてドコモの一部機種が「音楽ケータイ」となっているが、携帯電話にイヤホンを繋ぐという使い方はなかなか広まっていないようだ。

 着うたフル端末に高級イヤホンを繋ぎ、その音質を試すという記事が掲載されたが(3月9日の記事参照)、「ケータイイヤホン文化」を作れるかは、今後の音楽コンテンツ分野の発展において重要だ。

 着メロや着うたなど従来の携帯電話向け音楽コンテンツは、音楽ビジネスの周辺に新たに発生したビジネスであるため、音質に対してユーザーは寛容だった。しかし、着うたフルなどフルサイズの音楽配信では、携帯電話が“コンテンツ消費”分野の音楽ビジネスの主流に踏み込む。すると音質と価格のコストパフォーマンスがシビアになるため、これまで同様に「携帯のスピーカーで鳴らす」だけでは多くのユーザーから価格に対する納得を得られないだろう。曲単価の値下げと並行して、「イヤホンで聴く」スタイルを定着させなければ、音楽ビジネスの流れを変えるほどに大きな力を持ち得ないのではないか。

 しかし、今のところ各キャリアは「イヤホン」に対してなおざりだ。付属イヤホンの音質はあまりいいものではなく、高音質なイヤホンを繋げようとすると、変換コネクターを介さなければならなくなる。これはファッショナブルでないし、使い勝手も悪い。イヤホンの重要性を考えるなら、音楽ケータイは一般的なステレオミニジャック端子を採用し、付属イヤホンのクオリティも向上させるべきだろう。

 iPodは、ポータブルプレーヤー付属としては素性がよくシンボリックなイヤホンによって、ファッション的にもイヤホンをつけたくなるようにしている。音楽ケータイの成否の鍵は、意外と「イヤホンを付けさせるための演出」にあるのではないだろうか。

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