ラーニング・オーガニゼーション(らーにんぐ・おーがにぜーしょん)情報マネジメント用語辞典

learning organization / LO / 学習する組織 / 学習型組織

» 2004年01月09日 00時00分 公開
[@IT情報マネジメント編集部,@IT]

 所属メンバーの自主的な学習を促進し、その相互作用を通じて競争力を維持するための持続的な変化を行う組織的能力を身に付けた企業や団体などのこと。従来の権威主義的な組織――「管理する組織」に対置される新しい組織モデル。

 管理する組織が“効率”を指向しているのに対し、ラーニング・オーガニゼーションは問題発見、問題解決に対処することがテーマとなっている。問題解決型組織において、構成員は顧客ニーズなどの状況を把握したり、課題や解決策を発見したりするために継続的に学習を行うことが望まれる。

 ラーニング・オーガニゼーションを提唱したのはマサチューセッツ工科大学(MIT)教授のピーター・M・センゲ(Peter Michael Senge)で、1990年に出版された『The Fifth Discipline』によって世界中に広まった。センゲの言葉では「人々が継続的にその能力を広げ、望むものを創造したり、新しい考え方やより普遍的な考え方を育てたり、人々が互いに学びあうような場」「人々が強い意欲を持ち、コミュニケーションの方法を学びながらシステマティックなアプローチによって共通のビジョンの実現を目指すチーム組織」と定義される。

 前掲書でセンゲは、その実現手段として、次の5つの構成技術(ディシプリン)を挙げている。

  1. システム思考(systems thinking):ビジネスにおける構造的相互作用を把握する力:ビジネスにおける構造的相互作用を把握する力
  2. 自己マスタリー(personal mastery):メンバー1人1人が自己を高める意志を持つ
  3. メンタルモデルの克服(mental models):凝り固まったものの考え方を克服する
  4. 共有ビジョン(shared vision):個人と組織のビジョンに整合性を持たせる
  5. チーム学習(team learning):対話を行うスキルと場を養う

 ラーニング・オーガニゼーションのベースにあるのが、システム思考である。これはシステムダイナミックスに由来する思考技法で、センゲは企業の問題解決にシステム思考のみで十分と考えていたが、足りない部分があるとしてラーニング・オーガニゼーションにたどり着いた。ラーニング・オーガニゼーションにおいてシステム思考は、組織の持つ複雑性を正しく理解し、ほかの4つのディシプリンを統合する役割を担うものとされている。

 なお、1990年代後半からは、学習は組織を超えて行われるという意味で、範囲を拡張した「ラーニング・コミュニティ」という語も使われるようになっている。

参考文献

▼『最強組織の法則――新時代のチームワークとは何か』 ピーター・M・センゲ=著/守部信之、飯岡美紀、石岡公夫、内田恭子、河江裕子、関根一彦、草野哲也、山岡万里子=訳/徳間書店/1995年6月(『The Fifth Discipline: The Art & Practice of the Learning Organization』の邦訳)

▼『フィールドブック 学習する組織「5つの能力」――企業変革をチームで進める最強ツール』 ピーター・M・センゲ、アート・クライナー、シャーロット・ロバーツ、リック・ロス、ブライアン・スミス=著/柴田昌治、スコラ・コンサルト=監訳/牧野元三=訳/日本経済新聞社/2003年9月(『The Fifth Discipline Fieldbook: Strategies and Tools for Building a Learning Organization』の邦訳)

▼『フィールドブック 学習する組織「10の変革課題」――なぜ全社改革は失敗するのか?』 ピーター・M・センゲ、アート・クライナー、シャーロット・ロバーツ、リチャード・ロス、ジョージ・ロス、ブライアン・スミス=著/柴田昌治、スコラ・コンサルト=監訳/牧野元三=訳/日本経済新聞社/2004年6月(『The Dance of Change: The challenges to sustaining momentum in a learning organization』の邦訳)


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