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» 2004年11月13日 12時00分 UPDATE

特集:ERPトレンドウォッチ(2):ERPのインターフェイスがOfficeに変わる日

SAP社がNetWeaver、マイクロソフトがOffice Systemをリリースしたことによって、XMLでの連携が可能となった。古くからアライアンス関係にある両社だが、この連携によってERPはどのように変わっていくのだろうか?

[大津心,@IT]

 OSベンダとして古くからSAP社とアライアンス関係にあるマイクロソフト(MS)だが、SAP社がNetWeaver、MSがOffice Systemをリリースし、SOA時代を迎えた両社の関係は新時代を迎えたようだ。マイクロソフトはERP基幹システムをどう変えるのか、マイクロソフトの星野隆之氏、内海敦史氏、槇健志氏、田鶴大輔氏、岡詩子氏の5名にお話を伺った。(本文中敬称略)

増えるWindowsベースのSAPシステム

──マイクロソフトとSAPの関係とはどのようなものか?

星野 現在、2つのビジネスがある。SAP製品を土台から支援するいわば“縁の下の力持ち”であるSAPプラットフォームビジネスと、SAP製品のアプリケーション分野を担うSAPサラウンディングビジネスだ。

ALT マイクロソフトとSAP製品の関係

 SAPプラットフォームビジネスをOSのシェアで説明すると、2003年SAP新規インストールのうち、「73%がWindows」だった。またデータベースは、2003年SAP on Windows新規インストールのうち、「53.5%がSQL Serverベース」だ。5年前であれば、UNIXやOracleがメインであり、WindowsやSQL Serverは候補にも入っていなかっただろう。しかし、現状は50%を超えるシェアを獲得している。これまでSAPシステムには多額の導入コストと運用コストが必要とされてきた。しかし、現在ではプラットフォームにWindows ServerやSQL Server、IAサーバを利用する事で、安価にSAPを導入、運用できるようになったともいえる。過去に懸念としてあったMSプラットフォームの信頼性やパフォーマンスも、今ではUNIXと同等以上のレベルにまで進化しているといえるだろう。

ALT マイクロソフト株式会社システムズエンジニアリング本部エンタープライズパートナーTS部テクノロジースペシャリスト星野隆之氏

 両社の関係で“強み”といえるのは、1つはSAP社と当社の開発部隊の強固な協力関係だ。SAP社のドイツにある開発センターには当社の人間が多く常駐しているほか、当社の米国本社にも多くのSAP開発者が常駐しており、開発段階で非常に太いパイプが存在しているといえるだろう。

 2つ目は、Microsoft Consulting Service(MCS)のコンサルタントが、SAP製品の導入現場に入り、多くのノウハウを蓄積している点だ。

 また、技術面だけでなく運用面においても、当社ではITILを拡張したMOF(Microsoft Operation Framework)というフレームワークを作成し、『技術だけでない運用面でのサポート』を行っている。このような運用の分野は、SAPプラットフォームビジネスに含まれている。

──コンサルティングはどのような内容のビジネスか?

ALT コンサルティング本部プリンシパルコンサルタント内海敦史氏

内海 コンサルティングビジネスは、今年後半から来年にかけて非常に案件が増えてきている。

  実例を挙げると、ホスト・UNIXによる基幹システムが中心であった大手運輸業、大手金融機関がWindowsプラットフォームによるSAP R/3を選択した。大手製造業企業では、既存システムのOSがAIX、データベースがDB2で動いていたが、新規に立ち上げた関連会社ではWindowsとSQL Serverを選択した。

 また、実際にSIerから話を受けてコンサルティングをする際、「Windowsは安定性がない」といわれることも多いが、そのような指摘を受けた場合でも、弊社のテクノロジによって十分に高い可用性で運用できることを“正確に”伝えることが、コンサルタントの役割だ。また、Windowsはウイルスに狙われやすいという点についても、「しっかり基本的な対策を行えば問題ない」と認識している。

田鶴 このほか、ROI分析を行うサービスなどがある。これにより、経営トップ層に対して、投資回収率などを分析し、訴えている。また、現場ではWindowsプラットフォームへの連携のしやすさに基づく開発生産性の上昇や、運用の手軽さなどを訴求している。

使い慣れたOfficeで基幹システムを操作

──次にSAPサラウンディングビジネスに関してはどうか

星野 OfficeやWindowsアプリケーションなどの「スマートクライアント」の引き合いが非常に強い。R/3のユーザーインターフェイスは、必ずしも使いやすいとはいえない面がある。その点、使い慣れているスマートクライアントは有力だろう。また、情報系におけるWindowsやOfficeのポジションも絶対的な優位があるだろう。

 SAP社はNetWeaverを発表してから、自社製品以外との連携を特に重要視している。このことから、現在はSAP社のCRMと当社のOffice製品との連携が進められている。

──Office製品との連携とはどのようなものか?

ALT ビジネスプロダクティビティソリューション本部ビジネスプロダクティビティテクノロジー部シニアテクノロジースペシャリスト槇健志氏

田鶴 連携として一番大きな要素は、NetWeaverによってミドルウェア部分がXMLに対応した点だ。当社のOfficeもXMLに対応しているため、連携がより容易になったといえる。

 SAPシステム導入時に、海外ではユーザーインターフェイスをデフォルトのまま利用するケースが多いが、日本では独自に改良してから導入するケースが多い。このため、大幅な手間やコストが掛かっている。従来はR/3を導入しても、経理部や人事部などに限られていたが、現在では営業などの一般的な部署でもR/3を利用している場合が多い。

 特にR/3をすでに導入している経営者には、ERPを導入するからには“全社、全社員”に同時にR/3を利用させて全社のお金の流れや情報の流れをR/3に集約し、把握したいという意向が強いようだ。このことから、ユーザーインターフェイスに関してもより使い慣れたWindowsやOfficeのものが望まれている。

 具体的にいうと、R/3を全社的に導入すると、1日中R/3の画面を見ている社員も存在する一方で、1日数分、もしくは月に1回程度しかR/3の画面を開かないユーザーも出てくるだろう。つまり、基幹システムを利用する人数は増えるが、それに比例して利用時間の少ないユーザーも現れてくる。このようなめったにR/3を使わないユーザーにとっては、普段利用しているOfficeアプリケーションをR/3のインターフェイスとして利用できれば、非常に生産性が上がるだろう。

 アプリケーションの例を挙げると、前述の「InfoPath 2003」を筆頭に、Office 2003ではWordやExcelもXMLに対応しているため、Webサービス経由でSAPシステムに接続し、利用することが可能になっている。つまり、普段から使っているWordやExcelを窓口として使いつつ、SAPシステムから必要なデータを取得したり、作成したデータを送ることができる。

──具体的にはどのような使い方が想定されるか?

 「SAP TechEd '04」でもデモンストレーションする予定だが、SAP CRM向けにOfficeシリーズの新しいアプリケーション「InfoPath 2003」でフロントエンドのクライアントアプリケーションを作成した。

ALT マイクロソフトがデモ用に作成したテンプレート。左がSAPのインターフェイスで、右がInfoPathで作成したインターフェイス。右側は、見慣れたOfficeシリーズと同様のインターフェイスであることが分かる(クリックで拡大)

 デモでは、サーバサイドのシステムである「mySAP CRM」にWebサービス経由でアクセスするための2種類のフォームを作成した。1つ目はmySAP CRMの「活動情報」を参照しに行くフォームテンプレート。2つ目の「案件情報」は照会し、更新もできるテンプレートだ。このテンプレートを利用することで、InfoPathやそのほかのOffice製品を入り口として、「mySAP CRM」を直接操作することができる。「SAP TechEd '04」では、実際にこうしたフォームテンプレートの開発手順を、できるだけ分かりやすく解説する予定だ。

 このように、基本的にOfficeはSAP製品のフロントエンドの1つの選択肢として十分に検討していただけるようになっている。現在はCRMとの連携が主体だが、今後ERPなど、そのほかのサブシステムとの連携も進めていく予定だ。Officeを利用することで、普段から使い慣れたGUIでSAPアプリケーションを操作できるようになり、ライトな機能に限れば直感的な利用も可能となる。部門や使う状況によっては、SAP製品のGUIよりも、Office製品のGUIを利用する方が、より適した場面も考えられるだろう。

SOAが基幹システムの開発と運用を変える

──SAP NetWeaverの登場はマイクロソフトのビジネスをどう変えるか?

ALT ビジネスプロダクティビティソリューション本部ソリューション推進グループエグゼクティブアドバイザー田鶴大輔氏

星野 NetWeaverの「SAP製品以外と接続できる」という特徴を考えると、SAPサラウンディングビジネスだけが関連しているように考えられがちだ。しかし、広い意味で考えた場合、NetWeaverの究極的な目標は「TCO削減」や「ROI向上」だ。その意味では、SAPプラットフォームビジネスも十分関係してくることになる。

 このことから、当社のWindows Server SystemやOffice Systemなどの技術面と、Microsoft Consulting Service(MCS)のサービスとしての面も併せて訴求していきたい。

内海 少し前までは、SAP環境の高可用性化やセキュリティ強化がコンサルティング部隊の主な活動領域であったが、Office Systemとの連携案件も増えてきている。プラットフォームのコンサルタントはもちろんのこと、Officeに強いコンサルタントや開発系に強いコンサルタントもこれからさらに増強し、育てていきたい。

田鶴 前出のように、Office 2003によりNetWeaverとの連携が可能になったが、既存のまま利用するより、少しOffice Systemに開発を入れることによって、より親和性が増す場合が多い。また、Officeを中心として「そのほかの部分は.NETを利用する」といったケースも考えられる。いずれにせよ、多少の開発が必要であるため、開発に強いコンサルタントが求められることになるだろう。

 個人的には、NetWeaverでWebサービスに対応したことは非常に歓迎することだ。しかし、NetWeaverもこれだけ広がってくると、業界団体と同じくらいのインパクトがある。XBRL(Extensible Business Reporting Language)などは、独自にスキーマを定義して公開を始めた。同様に、SAP社にも「スキーマを使いやすく定義したもの」を公開してほしい。

──SOAなどの観点から見て、NetWeaverによる“つなぎやすさ”はどのように影響するか

星野 過去、「業務のすべてをSAP製品でやろう」として、SAP製品に独自のアドオンを制作・追加するというケースがよく見られた。しかし、アドオンを追加すればするほど、SAP自体の可用性は下がってしまう。SAP標準のプログラムに比べれば、自社開発のアドオンはやはり品質が低いため、SAP製品をコアにしていても結果としてシステム全体の信頼性や安定性が落ちてしまうのだ。アップグレードもできなくなる場合も多い。

 こうしたことを考え合わせると、「SAP製品ではここまで」と決めて、残りは.NETを用いたり、レガシーを残すことも視野に入れて検討するのが現実解となるだろう。NetWeaverやOffice 2003など、つなぐ技術はどんどん発展している。今後は、「つなげられるかどうか?」を心配するのではなく、「どう組み合わせて運用していくのか?」がシステム構築上の課題になってくるのだと考えている。

──MSとSAPの今後の連携の展開は

 SAPでは、従来の大企業メインの展開から、中小企業やSOHOまでを視野に入れた戦略の展開を図っている。これには、テンプレートを用いた導入支援や、中小企業向けのERP「SAP Business One」の販売開始などが挙げられる。

 当社ではこういったSAP社の中小企業向けのビジネス展開こそ、「当社の強みを生かした協力ができるのではないか」と考えている。Business

Oneは、特にWindowsプラットフォームとの親和性が高いことから、営業面からも協力できると考えている。

 具体的には、SAP社がBusiness Oneの販売パートナーを募集しているが、その際「初めてBusiness Oneを扱う」パートナー企業は、恐らくノウハウがあまりないだろう。そういったパートナー企業に対して、SQL

Serverの導入支援や教育、小規模から大規模までのサイジングのノウハウなどを提供して支援したい。

 また、中小企業向けの展開をする場合、マスのプロモーション展開が必要になってくるが、その際にも広告やセミナー展開などで協力できるだろう。例えば、全国を回って専門のセミナーを展開することなどを検討している。

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