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» 2004年12月26日 00時00分 UPDATE

情報システム用語事典:コミュニティ・オブ・プラクティス(こみゅにてぃ・おぶ・ぷらくてぃす)

communities of practice / CoP / 実践のコミュニティ / 実践共同体

[@IT情報マネジメント編集部,@IT]

 ある分野における知識の習得や研さん、あるいは知識を生み出すといった活動のために、持続的な相互交流を行っている人々の集団のこと。

 もともとはエティエンヌ・ウェンガー(Etienne Wenger)博士とレイヴ・ジーン(Lave Jean)博士の著書『Situated Learning』(1991年)に登場した言葉。この本では、仕立て屋を例に挙げて、伝統的な徒弟制度における学習の多くは、職人や上級徒弟の間の相互交流で行われていると分析し、「学習はコミュニティ・オブ・プラクティスへの参加の過程である」とした。ここでは“学習”とは、個人が知能や技能を習得することではなく、コミュニティ・オブ・プラクティスへの参加を通して得られる役割の変化や過程そのものであるとされている。

 この段階では、徒弟制に基づく伝統的職場や職場や学校などが「社会的実践が繰り広げられる場」であることを示す言葉だったが、その後ナレッジマネジメント分野で注目を集め日米企業における知識移転に関する研究などを通じて、「企業の公式の組織とは別にその内部に存在する、知識(特に暗黙知)の移転や創造のための人的ネットワーク」という意味に拡張されるようになった。

 企業や組織において、コミュニティ・オブ・プラクティスは本来的・必然的に備わっているものであり、公式に承認しようがしまいが存在するものである。承認されていない場合は、ナレッジワーカーがそれぞれに持つ、インフォーマルな個人的ネットワークとなる。コミュニティ・オブ・プラクティスは相互交流やインフォーマルな学習プロセスを通じて、ストーリーテリング、会話、指導、実習といったものを提供し、暗黙知の移転を可能にする。

 ネットワークの結びつきは、専門分野や職能を同じくする場合、共通の事業にコミットメントしている場合、所属や背景的な面での共通点はないが問題意識や関心、熱意などを共有している人々が集うコミュニティもある。ビジネスユニット内に収まることもあれば、部門をまたぐもの、さらには企業の枠を超えたものもあり、構成人数や継続期間もさまざまだ。

 その形成に関しては自然発生的なもの、必要に迫られ自発的にコミュニティが形成されたもの、意図的に作られたものなど由来などもさまざまで、所属メンバーも含めて“コミュニティ・オブ・プラクティス”であると認識していないような非公式のものもあれば、企業組織に秘密裏に活動するもの、正当化され企業から支援を受けたもの、高度に組織化・制度化され企業の意思決定プロセスに組み入れられるものもある。

 米国の事例では企業の中で公式の位置付けを受けて、企業の意志決定に影響を及ぼすようなコミュニティ・オブ・プラクティスもある。これからの知識創造時代に必要なこの理論とその実践を、豊富な事例(世界銀行、ロイヤル・ダッチ・シェル、マッキンゼー・アンド・カンパニー、ゼロックス、ダイムラークライスラーなど)を挙げて説く。

 ウェンガーらは「どんなコミュニティ・オブ・プラクティスに属してきたかの履歴が、その人の知識体系そのものを表す」という、新しい考え方を示した。

 このように、欧米のナレッジマネジメントの焦点は、いかに活発に知識創造と共有が行われるコミュニティを創設し、それをビジネスのコンテクストに明確に位置づけるか、という新しい経営手法へと移ってきている。

参考文献

▼『状況に埋め込まれた学習――正統的周辺参加』 ジーン・レイヴ、エティエンヌ・ウェンガー=著/佐伯胖=訳/産業図書/1993年11月(『Situated Learning』の邦訳)

▼『コミュニティ・オブ・プラクティス――ナレッジ社会の新たな知識形態の実践』 エティエンヌ・ウェインガー、リチャード・マクダーモット、ウィリアム・M・スナイダー=著/野村恭彦=監修/野中郁次郎=解説/櫻井祐子=訳/翔泳社/2002年12月(『Cultivating Communities of Practice』の邦訳)


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