守備範囲が広がる企業パフォーマンス管理トレンド解説(14)(1/2 ページ)

これまでさまざまな経営管理手法が提唱されてきた。管理会計、TQM、ABC、EVA──、最近ではBSCが注目を集めている。しかし、こうしたマネジメントを行うために大きな手間が掛かるという問題があった。それを乗り越えるCPMとは?

» 2005年09月09日 12時00分 公開
[垣内 郁栄,@IT]

 企業戦略を社内に浸透させ、企業全体の業績をトータルで把握するための経営手法「企業パフォーマンス管理」(CPM)が新たな段階に入りつつある。CPMという言葉自体は調査会社のガートナーが2001年に提唱し、広まったもの(BPMEPMなどともいう)。最近の注目されるのは、CPMの解釈を広げて内部統制や将来予測、意思決定の支援にまで守備範囲を広げようとしていることだ。

CPMは、すなわちPDCAサイクル

ベリングポイント ワールドクラス・ファイナンスグループ ディレクター 秦久朗氏

 CPMとは計画立案、モニタリング、業績の評価、戦略の再構築というPDCAサイクルを通じて「企業戦略を推進するための経営手法」(ベリングポイント ワールドクラス・ファイナンスグループ ディレクター 秦久朗氏)。企業戦略の立案(プラン)、業績のモニタリング(実行)、業績の評価(チェック)、戦略の再構築(アクション)のサイクルを回すことで、「企業を包括的に見て、企業戦略を変革する手法」(秦氏)でもある。 CPMは業績評価を支援するITシステムが注目を集めることが多いが、実際は「方法論」「プロセス」「評価基準」「システム」と、企業のビジネス・パフォーマンスを監視・管理する上での「全部を包含するのが重要」だという。

 ここでいう「方法論」とはバランスト・スコアカード(BSC)やEVAABMなどを指す。「プロセス」は予算編成や予測、目標設定、ビジネスアクティビティ・モニタリング(BAM)など。「評価基準」は、財務面、非財務面、定性的、定量的と一貫した形で設定される。

 最後の「システム」は、ビジネス・インテリジェンス(BI)やデータウェアハウスダッシュボードなどの利用である。秦氏は、「CPMとはPDCAであるといっても過言ではない」と強調し、「PDCAサイクルを継続的に回していくために方法論やシステムを柔軟に組み合わせていくことが重要だ」と指摘した。

BIは“見える化”、CPMは“見せる化”

 また、秦氏はCPMが内部統制など企業のリスク管理の機能を併せ持つ、新たな段階に入ってきたことを指摘する。企業は利害関係者(ステークホルダー)の監視の目が厳しくなっている。上場企業で相次いでいる企業会計の不祥事を受け、国内でも企業の内部統制を強化する動きがある。IRの観点から企業の業績を積極的に外部に示す必要性にも迫られている。「外部の目が厳しくなり、企業はステークホルダーに対してパフォーマンスを示し、アクションを示さないといけない」(秦氏)。

 これまでのBIが内部の情報を分析し、内部の関係者に対して意思決定の情報を提供しているのに対して、CPMは外部に対して業績やアクションを迅速、適切に開示することを重要な目的にしているといえる。秦氏は「BIは業績の可視化だが、CPMはステークホルダーに対する“見せる化”。企業の全体をいつ外部に見せても大丈夫なように環境を整えるのがCPMといえる」と語った。ベリングポイントは、CPMのPDCAサイクルの中に、企業業績の不確実性の認識とその対応を含む「リスク管理」を盛り込む必要性を訴えている。

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