1. 監視可能なリソース
動的ワークロード管理を行うため、各仮想サーバにどのくらいの負荷がかかっているかを把握できなければならない。そのためにはまず、どのような仮想サーバ内のリソースが、現在どれくらい利用されているのかを把握することが必要である。具体的には、仮想サーバのCPUの利用率、仮想サーバに割り当てられているメモリの利用率、仮想サーバに割り与えられているネットワーク帯域などである。
基本的にはCPU、メモリ、ネットワーク帯域の利用率がリアルタイムに監視できれば十分であるが、仮想サーバ上で稼働しているシステムによっては、単純なCPUネック、メモリネックということだけではないこともある。そのため、作りこみが発生するものの、独自の監視項目を作成できる製品もある。たとえばSyslogの中身や、アプリケーション固有のログなどを監視項目として設定できるものがある。
2. 設定可能なトリガ
上記で述べた監視可能な項目(CPU、メモリ、ネットワーク帯域)の値を収集し、リソースの再配分を行うためのロジックを動作させるためのしきい値を設定し、このしきい値を超えたときにリソースの再配分を行う。
しきい値の設定は、上記のCPU利用率、メモリ利用量のしきい値をパーセントで指定するような単純なものから、さまざまな監視項目を組み合わせることで、より上位のしきい値を設定できるものまである。より上位のしきい値の例としては、仮想サーバで処理できるスループットやレスポンスタイムなどがある。
3. 再配分可能リソース
監視可能項目で監視していた値がしきい値を超えたときに、リソース配分を変更する。このときに変更できるリソースの種類によって、より多くの状況に対し、きめ細かなワークロード管理ができる。
最低限、仮想サーバに割り当てられている物理CPUの配分の変更はできる必要があるが、メモリの配分、ディスクI/O帯域の配分、ネットワーク帯域の設定を変更できるものもある。
4. 設定可能アクション
ワークロードを監視し、そのワークロードがあるしきい値を超えたときに、仮想サーバのリソースの変更や他のシステムへの通知などを行う。このときの仮想サーバから外部への通知方法により、ほかのシステムとの運用監視の統合や、連携、拡張のしやすさが異なる。
単純な製品は、再配分可能リソースで述べたCPU利用率、メモリ使用量などのしきい値を超えたら、それぞれ不足したリソースを確保するように設定を変更する機能のみを持つ。製品によっては、CPU、メモリの増減以外の動作を行うためスクリプトを起動することのできるものや、外部のプログラムを起動できるものもある。また、システム管理者に動作状況を知らせる方法として、SMTPを用いてメール送信するものや、ほかの監視ツールと連携するためにSNMPに対応しているツールもある。
これまで、サーバ仮想化技術における主な評価ポイントについて述べてきた。今後は仮想サーバそのもののから、いかに仮想サーバを効率よく運用するかという点にフォーカスが当たっていき、運用に関するポイントもより重要度が増すと思われる。
具体的には第1回にも少し触れたが、今後発展する技術の1つに、ポリシーベースの運用技術がある。動的ワークロード管理では、人間の管理負荷を削減するためにシステムが自分自身にかかっている負荷に応じて適切なリソース配分を自律的に行えるようになることを目指している。これを実現するために、事前に設定したポリシーに従ってリソースの自動配分を行うような、サービスレベルを自動的に維持するポリシーベースの運用をする製品が出てきている。
また、研究レベルでは、運用ノウハウデータベースと接続し、実際の設定とその結果のケースを蓄積することで、未知のパターンの処理負荷がかかってきた場合でも、類似したパターンを検索してリソースの設定変更を行うような技術の開発が進められている。そのつど対応しなければならない人間の判断回数を低減し、ある程度システム自身を自律的に制御させることを目指している。
▼著者名 松本 健 (まつもと けん)
1994年早稲田大学大学院理工学研究科卒業後、同年野村総合研究所入社。
現在、情報技術本部にてシステム基盤を中心とした新技術の調査・評価を行うITエンジニアとして活動。
最近ではESB、BPM、ユーティリティ・コンピューティング、サーバベースド・コンピューティング、RFIDミドルウェアなどの調査・評価を行っている。
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