古くから中国オフショア開発に取り組んできた企業では、システム開発以外の“業務”をアウトソースする動きが高まっています。一般的には、こうした動きを「業務処理(ビジネスプロセス)の外部委託」や「間接業務の外部委託」などと呼んでいます。BPOという名称もすっかり市民権を得たようです。
米国では、2005年には50万人分、2015年には330万人分のホワイトカラーの仕事が海外へシフトすると予測されています。具体的には、以下の業務がすでに対象となっているのです。
2005年までは、「オフィスサポート業務」「コンピュータ業務」「ビジネスオペレーション」の3つが主流でした。しかし、あと10年もすると、すべての分野で海外シフトが実施されるようになるでしょう。日本国内では、沖縄県本島にコールセンタを集積化した成功事例が有名です。中国でも、日本語文書のデータエントリに始まり、コールセンタや画像処理、CAD入力などのBPOが花盛りです。
インドを中心とする英語圏のBPO市場は、40億ドル以上の規模を誇るコールセンタを筆頭に人事業務も30億ドル以上あり、その後に給与支払いやコンテンツ開発、会計業務、システム運用/管理などが続きます。
上海オフショア開発交流会に出席したある日系ベンダは、これまで「コンテンツ開発」に相当するBPO案件を専門に手掛けてきました。詳細は以下のとおりです。
現在、BPO案件で必要とされるコンピュータスキルで最も重要なのは、「HTMLコーディング能力」です。続いて、画像処理の需要が高いことから、Adobe製のソフトウェアを使いこなす能力が求められます。必要とされるコンピュータスキルには、以下のようなものが挙げられます。
Javaプログラマと比べて、上記のスキルを持つ人材は上海では安く簡単に調達できるのです。
それでは、肝心の日本語能力についてはどうでしょうか。BPO案件とはいえ、やはりオフショア開発と同様に、ブリッジSEに相当する高級人材は必要です。ところが、日本向けBPO業務に詳しい関係者によると、BPO案件では日本との窓口役に優秀な日本語人材が1人いれば、残りの作業者は日本語をまったく理解していなくても作業は十分に可能だというのです。
例えば、現在中国で日本語をひたすらデータエントリしているBPO作業者の多くは、日本語を理解していません。日本向けBPOでは、人件費の高い日本語人材を大量にそろえる代わりに、複数の担当者による二重三重のベリファイ方式を採用する方が一般的です。オフショア開発ではあまり見かけない、厳しい懲罰制度も好んで用いられます。
そして、BPOの実務経験の長い専門家はこう断言します。
「日本語検定3級程度の人材に、最終成果物の品質チェックは無理!」
「どうせ無理なら、最初からあきらめて日本側でチェックすればいい」
上海オフショア開発交流会でこの発言を紹介したときには、会場が一瞬「おーっ」とざわついたのですが、すぐに参加者の多くが「そうそう」とうなずきました。2次会でもこの話題になったのですが、やはり日本語検定3級レベルだと、漢字の読み方が分からないようです。
例えば、HTMLコーディングの作業で「力(ちから)」という文字を入力する場面を想定しましょう。日本語能力の低い中国人担当者は、ローマ字入力ができないので、手書き入力せざるを得ません。ところが、間違って「カ(カタカナのか)」や「刀(かたな)」と誤入力してしまう恐れがあるのです。そういわれてみれば、中国人が作った日本語のポスターやパンフレット・名刺をじっくり見ると、こうした間違いのオンパレードです。例えば、以下のような間違いを頻繁に目にするのではないでしょうか?
「カ」「ヵ」「力」「刀」←全部違う文字です
「-」「ー」「一」「−」←全部違う文字です
日本語検定3級レベルの人材がこれらを見分けるのは至難の業なのです。
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