通常のオフショア開発と同様にBPO案件でも、日中間にはテストや品質保証に関する考え方に大きな隔たりがあります。例えば、エンドユーザーの要求を実現できない状況が発生した際のテストエビデンス1つ取ってみても、
[日本側]
[中国側]
以前、筆者が書いた「中国人の日本型開発アプローチに対する本音は?」でも紹介しましたが、顧客サービスに対するイメージも異なります。
[日本側]
[中国側]
でき上がったモノを見て、気に入らない個所を修正する。こうした日本的なやり方に対して、多くの中国人技術者は下で示すような否定的な見解を持つのです。
[日本側]
[中国側]
先ほど、「BPO案件の作業者は日本語をまったく理解していなくても作業は可能である」と述べました。このことから、最初に「技術」さえあれば、「日本語」は後から鍛えればいいという発想が生まれます。BPO案件では、要求される技術レベルはさほど高くありません。
このような背景から、最近の上海では新卒のプログラマを採用して、自社でじっくり育成する傾向が高まっています。新卒の学生で「日本語」と「技術」の両方を兼ね備えた人材は皆無ですが、それでもある程度の技術力さえあれば、BPO案件では即戦力となるからです。
以上の点から、オフショア開発とBPOの相乗効果が導き出されます。すなわち、
・システム開発と比べて、対応できる人材の層が厚い
・人材を獲得しやすく、スピーディーに対応が可能
・業務を覚えるまでの期間が短い
・人材獲得、人材確保のためのコストを下げられる
BPOと聞くと、すぐにコールセンタやデータエントリなどを思い浮かべる方がいるかもしれませんが、数あるBPO案件の中には、システム開発とそっくりな業務も少なくないのです。その中でも、特にオフショア開発に近い「Web制作(HTMLコーディング)」の事例を紹介します。この事例は発注側の指示があいまいで、中国人はおろか仲介する(ブリッジする)日本人ですら混乱してしまった事例です。
■発注者:「テーブル幅が崩れています」(←画面レイアウトへの指示)
このケースでは、発注企業の日本人には「こうしてほしい」というイメージがあるのですが、中国側とテーブルの形が共有できていないことがあってこういった指示となります。
→このケースでは、画面ヘッダ部とフッタ部の表示幅がそろっていないというのが正解でした。
■発注者:「○○部分はカタログデータから流用してほしい」
カタログをHTML化する仕事での出来事です。中国側はカタログデータがどの部分を指すのかまったく分からず困ってしまいました。発注企業の日本人には「カタログAの何ページ目の写真」という思いがあったのですが、中国と十分に情報が共有されていなかったことが原因となり、こういったクレームが入りました。
■発注者:「以前のモノに戻っています」(デグレードの指摘)
これでは、どの時点の「モノ」を指すのかがあいまいです。直前のバージョンか、それとも前の前のバージョンなのか、作業形態によってはまったく予測がつかないことがあります。
外国人が主体のオフショアリングでは、正確な作業指示が何よりも重要です。特に、画面など「見た目」にかかわる作業指示は、正しい日本語と具体的な図面を使わない限り、まず相手に理解されません。日本企業を経由した間接的なオフショアリングであっても、こうした危険性はまったく変わりません。逆に、「日本人同士だから」といって、つい油断してしまうので要注意です。
上海のオフショアベンダがBPO案件に着手しだしたのはつい最近のことです。そのため、オフショア開発とBPOの相乗効果を論じるのは早計かもしれないので、あえて筆者の見解を述べます。
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