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» 2006年05月11日 12時00分 UPDATE

ユーザーサイド・プロジェクト推進ガイド(9):プロジェクトチームのリーダーに向く人、向かない人 (1/2)

プロジェクトチームがチームとして機能するか否か、リーダーの果たす役割は大きい。リーダーとはどういう存在か、あらためて考えみよう。

[山村秀樹,@IT]

 チームで遂行されるプロジェクトにおいて、優秀なリーダーの存在は極めて重要です。そこで今回から、リーダーについて考えてみることにします。リーダーシップの具体的な技術に関してはコーチングなどの記事を参考にしていただくことにして、ここではもっとベーシックなところをターゲットにします。なお対象としては、ユーザーサイドに限らずプロジェクト一般についての話となります。


参考記事
コーチングを身に付けよう(@IT自分戦略研究所)
コーチングを学びたい人におくる5冊(@IT自分戦略研究所)


誰でも持っているリーダーの素質

 よく話題になることに、リーダーにはリーダーとしての素質がなければならないのか、ということがあります。ある程度の素質は必要でしょうが、それは大多数の人が持っているはずです。そのように考えられる根拠はあります。

 例えば、ふさわしい人が地位に就くのではなく、「地位が人を育てる」ケースはよく知られています(年功序列主義の会社ではよく見られることです)。これは、リーダーとして特別な素質がないと思われたり、思い込んだりしている人にもリーダーが務まることを示しています。

 ただ、年功序列制度のように徐々に地位が上がることで、リーダー(候補者)と組織の双方に準備期間がある場合と、一度こっきりで失敗の許されないプロジェクトでいきなりリーダーとしての行動を求められる場合とでは、次元が違うようにもみえます。

 確かに違いはあるでしょう。しかし、それは準備するスピードの差といえます。映画やドラマで、主人公がいきなり重要な地位に抜てきされる──よくあるストーリーですが──と、主人公は猛烈に勉強をしたり、仕事の準備をしたりします。

リーダーには自信が必要

 リーダーの仕事とは、組織やチームに方向性を与え、その方向に行動させることです。そのためには特に権限と自信が必要です。

 権限は、ベンチャー企業の起業家のように自分で手に入れる場合もありますが、ITプロジェクトのリーダー権限は上位者(社長・発注者などのプロジェクトオーナー)によって与えられるのが一般的です。リーダーに任命されるということは、公に認められた権限が与えられているということになります。

 ただし後進を育てるために、下位のメンバーを名目的なリーダーにして、上位のメンバーをアドバイザーとすることがありますが、この場合は実質的な権限委譲は行われていないといえるでしょう。また政治的な理由で権限のないリーダーが置かれることもありますが、これも本稿で考える「リーダー」ではありません。

 一方、自信は自らの努力によって獲得する必要があります。自信とは自分の行為や能力、主義を信じることです。自信を持っている人は自らの考えや活動に対して、ち密な検討や過去の行動を通して、「これ以上のものはない」、あるいは「これ以上のものはないはず」と確信しているかそれに近い状態にあります。それには、その分野に関しては「自分は人よりも優れている」「人に劣っていない」と認識することです(検討や試行などなしに自分の能力を信じ込んでしまっている状態は、自信ではなく、自信過剰、思い込み、勘違い、錯覚、うぬぼれ、などといいます)。

 きちんと裏付けのある自信があれば、メンバーから質問や意見があっても動ずることなく対処することができます。メンバーの意見に問題や誤りがあればそれを指摘し、自分の考えを説得することができます。また、メンバーの意見の方が優れていれば素直に同意できます。これは、自分の考えがすでに十分に練られたものだからできるのです。そして、この態度はメンバーに安心感、感動、あこがれを与え、尊敬の念を得ることができます。

自信をつかむには、努力が大切

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 「自分にリーダーは無理」と考える人は、恐らくこの“自信”のところでつまずいているのではないかと思います。

 ルーチンワークならばいざ知らず、未経験の事柄の多いプロジェクトであれば心配事はいくつも出てきます。恐らく、リーダーの役割で一番不安に思うのは、プロジェクトのマネジメントではなく、チームを牽引することではないでしょうか?(組織をリードすることと、マネジメントは別の概念とされますが、ほとんどの場合同一人物が同時に行います)。メンバーに反対されたらどうしよう、メンバーがついてこなかったらどうしよう、メンバーからクレームが出たらどうしよう、と不安になるのです。

 実際のチームでは、自分の意見をゴリ押しするタイプの人もいますし、どこかで拾ってきた近視眼的な意見を臆面もなく口にする人もいます。表では何もいわないけれど裏で批判を繰り返す人もいます。リーダーとしてこのようなメンバーを率いることは、自信がなくてはできないことでしょう。

 自信を持つことができない理由として、「気が小さいから」「しゃべるのが苦手だから」「要領が悪いから」などが挙げられそうですが、何らかのトラウマがあるなど特殊な事情は別にして、“普通の事情”はリーダーとしての自信が持てない理由として一般化できません。でなければ“地位が人を育てる”事例はもっと少ないことでしょう。

 地位が人を育てるという現象は、その人が周囲の期待に応えるよう努力した結果です。この努力が自信へとつながります。そして、こうしたケースが決して少なくないことを考えれば、その努力も特殊な種類のものではないと考えられるのです。簡単にいってしまえば、自信を持つということは準備を十二分にしておくということであり、リーダーにとって必要な素質とは「努力することができること」といえます。

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