プロジェクトチームのリーダーに向く人、向かない人ユーザーサイド・プロジェクト推進ガイド(9)(2/2 ページ)

» 2006年05月11日 12時00分 公開
[山村秀樹,@IT]
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リーダーに向くのは、気の強い人より弱い人

 一般的に、リーダーに向いているのは気の強い人と思われているようです。気が弱いと思っている人は、「自分はリーダーに向いていない」と自己評価していることが多いかもしれません。しかし、気の強い人が特にリーダーに向いているということはありません。

 “気が強い”が、「他人の意見を排除し、他人に自分の意見や都合を押し付ける」という意味であれば、リーダーには向いているとはいえません。ガミガミブーブーいってメンバーの意見を排除し自分の意見を押し通せば、メンバーのモチベーションは下がりますし、リーダーが暴走してもチーム内にブレーキ役が存在しない状態になります。

 リーダーの仕事とは、「組織に方向性を与え、その方向に行動させること」と書きましたが、その前提には“成果”が求められています。より良い成果を追求するには、ほかのメンバーの意見も必要です。多様性の重要さがいわれるようになりましたが、これを無視するようでは優秀なリーダーとなることはできません。

 社会的にも、リーダーがメンバーに意見を押し付けるよりも、メンバーの意見を尊重し彼らの持つ能力を生かすリーダーが率いるチームの方が好成績を収める、と考えられています。これは各メンバーの力を引き出して活用するコーチングといわれるテクニックが注目を浴びる理由でもあるでしょう。

 気の強い人がリーダーに向いていると考えられているのは、その方がリーダー自身のストレスが少なくて済むという個人的な理由であって、チームの成果とはあまり関係がありません。

 気が弱い人とは「自分よりも周りを気にする人」と解釈すれば、リーダーとしての適性は気の強い人よりも、むしろ気の弱い人の方にあります。メンバーの意見を相手の立場に立って同じ目線で、好意的によく聞いて活躍の機会を与えることは、メンバーのやる気を上げ、チームの成果を押し上げます。

リーダーには、ほかのメンバー以上の見識と判断力が必要

 しかし、リーダーはメンバーの意見をただ聞く一方ではダメです。その組織にとって初めてのプロジェクトだったり、めったにないプロジェクトであれば、メンバーのほとんどが初心者である場合もあります。その場合は、誰かがティーチャーとしてメンバーを指導しなくてはいけません。そして、その誰かとはチームに方向性を与えるリーダーです。

 またリーダーであるからには、メンバーの意見に見解を示してメンバーに応答したり、誤りがあれば指摘したりする必要があります。リーダーには、各メンバーの意見を整理して、チームとしての意見を決断することが求められます。それなのに、メンバーからサポートを要求されているのに何も示せなかったり、あの人は意見を採られなければ気を悪くするなどと考えて右往左往したりするようなことがあれば、メンバーはついてきません。

 リーダーには上級職に対してプロジェクトの報告をしますが、その中でチームの意見を説明する機会もあります。その際、リーダーが理解できていないメンバーの意見をチームの意見としてそのまま説明しても、納得してもらえることはないでしょう。その上級職は、リーダーはチームとしての判断に無責任でいるのではないか、と疑うでしょう。これは相手がベンダであっても同様です。

 つまり、リーダーにはメンバー以上の見識による自分の意見が準備されていなければなりません。そして、チームの意見を自分の意見として認知するだけの判断力と覚悟が必要となります。

 ここに準備を十二分にし、自信を持つ努力が必要になります。次回は、自信を持つ方法について考えます。

筆者プロフィール

山村 秀樹(やまむら ひでき)

某製造業において、主としてシステムの運用保守作業に従事している。仕事を通して、コンピュータ・システムに関心を持つようになり、中でもシステムの開発プロセスについて興味を感じている。

Elie_Worldを運営し、システムのライフサイクル全般にわたる作業について考えている。



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