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» 2006年06月01日 12時00分 UPDATE

運用管理者のための知恵袋(4):失敗しないグループウェア導入法とは

企業の日常業務を活性化させるツールとして、グループウェアを導入する企業は多い。しかし、グループウェアの選びかたを間違えるとかえって業務を非効率にしかねない。そこで今回は、失敗しないためのグループウェア導入ポイントを解説する

[sanonosa,@IT]

 「グループウェア」を改めて説明するまでもないかもしれないが、ITを用いて企業内の情報共有やコミュニケーションの効率化を実現するソリューションのことである。グループウェアの基本機能には「メール」「掲示板」「スケジュール管理」「To Do」「アドレス帳」「設備予約」「文書管理」などがある。また、それらに加えて「ワークフロー」「レポート」「タイムカード」「在席確認」「決裁」などの機能が含まれていることもある。

 グループウェアを導入することは企業の日常業務を活性化させる効果があるが、選びかたを間違えるとかえって業務を非効率にしかねない。そこで今回は、失敗しないためのグループウェア導入のポイントを押さえてみよう。

グループウェア選びの基本

 さて、まずはグループウェア選びの基本を押さえよう。

1. グループウェア製品にはそれぞれ一長一短がある

 グループウェアでは、汎用性を前提として、さまざまなトレードオフが検討されたうえで各機能が設計されている。設計は、何を重視するかによって変わってくる。

 トレードオフの例としては、利便性重視か機密性重視か、カスタマイズ利用前提かデフォルト利用前提か、自社サーバ利用かASPか、などがある。それらを自社の文化に合わせて選択することが必要である。例えば、自由な社風の会社なのに機密性を重視した製品を選ぶと社内の猛反発を受けたり、社内に技術者がいないのに自社サーバ利用を選ぶと、トラブル発生時に誰も対応ができず、業務上大きな支障が起きたりする。

2. グループウェア製品間の機能の多さの比較は無意味

 グループウェア製品を選定する場合、機能の多さを比較することはまったく意味がない。グループウェアにはたくさんの機能が含まれているが、すべての機能を使う必要はまったくない。本当に必要なのは、自社の問題を正確に把握し、その問題解決を実現できるグループウェアを探すことである。スケジュールと掲示板の機能だけ使えればいいのに、無理にワークフローや文書管理までグループウェア上で実行しようとすると、使いづらくてかえって業務に支障が出る場合も多い。

 どうしても自社の問題を解決できるグループウェア製品が世の中に存在しない場合は、自社開発する必要があるかもしれない。

3. 企業規模によって適切なグループウェアが異なる

 中小企業向けのグループウェアと大企業向けのグループウェアでは設計や構造が異なる。従ってグループウェアを選定する場合、企業規模に合う製品の中から選定するのが大前提となる。中途採用が多い会社では、企業規模の異なる企業から移ってきた人が、前職で使っていたグループウェアが使いやすかったという理由で自社の規模に合わない製品の導入を提案する場合があるので要注意である。

4. 現場の人々にも検証を依頼する

 グループウェア製品を選定する際、情報システム部門だけで検討するのは問題がある。グループウェアは現場の業務効率に直結するため、できるだけ現場に近い人たちにも検証作業に加わってもらうべきである。例えば、タイムカード機能について現場に検証を求めたところ、社内の営業スタイルに合わないとか、24時間稼働しているコールセンターの扱いに工夫が必要になるなど、情報システム部門が想定していなかったような事項が現場から次々と寄せられることが多い。

5. グループウェアの利用は強制かそれとも任意か

 グループウェアは万能ではないので、全社最適が実現できるグループウェアであったとしても、ユーザー個人の単位で見ると必ずしも高い満足度が得られるわけではない。例えば「スケジュール管理」や「To Do」機能が使いづらいと感じる社員がいるとして、それでも会社は全社員に、それらの機能を強制的に使わせるのか、もしくは利用を任意にするのかはその会社のポリシー次第である。このポリシーによって選ぶべきグループウェア製品が変わってくる場合もある。例えば、全員に使ってほしいのに強制利用を指示しなかったせいで、中途半端な状態に陥ってしまうこともあり得る。

国民性や企業文化を意識しよう

 グループウェアは国民性や企業文化によって満足度が大きく左右される。ここでは文化にまつわるポイントをおさえよう。

1. 海外製品の導入を検討する場合は、その国と日本の文化の差に気をつける

 海外の市場と比べると日本の市場にはグループウェア製品の種類が非常に多いと聞いたことがある。客観的なデータは残念ながら手に入らなかったが、海外に住む多くの友人にヒアリングした限りでは、どうやらそれは事実らしい。

 これはどうやら海外でよく使われるグループウェアが日本のコミュニケーションに合わないため、日本には日本のグループウェア開発が必要だと気づいたメーカーがたくさんあったことが事の真相らしい。

 例えば、アメリカのグループウェア製品におけるスケジュール機能の使い方は、原則的に詳細を他人には公開しないのが一般的だが、日本では公開が必須である。これは、おそらくアメリカの場合は個人主体の文化なのに対し、日本はチームプレーの文化であるからだと思われる。

2. グローバル企業ではさまざまな国の文化を考慮しなければならない

 グローバル企業ならではの悩みは、既に述べたように、各国で文化が違うため、国ごとに使い勝手のニーズが違うことである。通常の場合、導入するグループウェアを決定するのは親会社で、その親会社は自国の文化に合うグループウェアを選びがちだが、他国にある支社から見れば、親会社の文化の押しつけにしか受け取られないことがある。

3. 企業文化も多種多様である

 国によって文化が異なるように、企業によって文化もさまざまである。他社の評判を聞いて安易に同じグループウェアを導入するということがあるが、それは間違いである。例えば「文書管理」で、A社は公開された文書は原則的に全員が見られるようにしているのに対して、B社は役職別公開、C社は承認が得られた人だけ公開、となっているかもしれない。こういった企業文化への対応がグループウェアの基本機能として装備されていないと、その機能は使い物にならなくなるだろう。

社内業務プロセスを変えてもらう

 グループウェア導入には社内業務プロセスの変革も伴わねばならない。最後に、社内業務プロセスにまつわるポイントをおさえよう。

1. グループウェア利用促進をトップダウンで強要すべきか否か

 変化にはきっかけが必要であるが、社内業務プロセスの変革においてはトップダウンの指示で強要するか、もしくはユーザーを説得して変えてもらうか、の2つの方法がある。どちらが適切かは企業文化による。指示系統がしっかりしている企業においてはトップダウン、比較的自由な社風の場合においては説得という手段がよさそうである。

 特に、自由な社風の企業でトップダウンによる強要を行うと、猛烈な反発を招きやすいので、グループウェアを使うことの利点を理解してもらうために資料を作成したり説明会を実施したりすることを通じ、自然な形で導いていくことが大変重要になる。

2. 部門サーバを許可すべきか

 グループウェアを導入すると、それまで存在していた部門サーバをすべて廃止してグループウェアに統合するか否かという話が、必ずといっていいほど持ち上がってくる。もしグループウェア上ですべての情報共有やコミュニケーションが実現できそうであれば、グループウェアに統合するのがよい。しかし、グループウェアは汎用的に作られているため、どうしても業務に合わない場合もあるだろう。その場合に限って部門サーバを残すのもよい考えだと思われる。ただし明確なルールを決めておかないと、再び部門サーバが乱立する可能性がある。

 グループウェアは日常業務に密接に関係する、とても重要なツールであるが、グループウェアだからといってすべての機能を使いこなす必要はなく、業務上必要な機能に絞って慎重に選定することが大切である。また国民性や企業文化に密接に関連するので、導入にはそれらを十分に配慮する必要がある。それからグループウェア導入には社内業務プロセスの変革が伴う。もし新しいグループウェアが社内に定着しないようであれば、うまく受け入れられるように、現場の人々の立場になって考える必要がある。

著者紹介

▼著者名 sanonosa

国内某有名ITベンチャー企業に創業メンバーとして携わる。国内最大規模のシステムを構築運用してきたほか、社内情報システム業務を経験。韓国の交友関係が豊富なことから、韓国関連で多数のシステムインテグレーションを行ってきた。


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