新連載「運用管理者のための知恵袋」では、運用管理担当者の日常業務に関するヒントやアドバイスを提供していく。第1回は社内での立ち回り方について。
システムの運用管理担当者は、ITに関することなら何でも対応することが求められる「何でも屋さん」である。「多忙な割にはイマイチ社内からの評価が良くないんだよなぁ」と嘆くことも多いと思う。そこで今回は、システムの運用管理担当者の社内での立ち回り方を考えてみたい。
システム運用管理担当者の仕事は、業務部門ユーザー(従業員)に対して快適なITサービスを提供し、業務に役立ててもらうことである。
IT部門に所属していると、どうしてもシステム自体に目が向きがちであるが、システムの構築や運用は単なる手段であり、本来の目的ではない。システム運用管理担当者は、常に従業員満足度の向上を目標に置かねばならない。
いまさらいうまでもないことというなかれ。この基本的なことが、日々の忙しさの中でどこかに忘れ去られてはいないだろうか。
従業員満足度を上げるためには、システム自体の運用管理を上手に行うことも重要だ。しかしむしろ、社内を歩き回って現場を知ることや、従業員トレーニングの充実、ドキュメントの充実など、現場とIT担当者の精神的距離を近づける努力をしていくことの方が、よほど効率が良いと思う。個人的には「システム運用管理担当者」という呼び名はあまり適当ではないと考えている。気持ち的にはむしろ、「ITサービスコンシェルジュ」くらいがちょうどよいのかもしれない。
社内のIT化が進めば進むほど、システム運用管理担当者の役割が重要になり、必然的にシステム運用管理担当者の社内での影響力が大きくなる。社内での影響力が強くなるということは、影の権力を持つということである。
だが、システム運用管理担当者の目指すべき方向は、あくまでも従業員満足度の向上である。そのために、システム運用管理担当者は影の権力者と呼ばれない努力が極力必要になる。
影の権力とはどのようなものか。大ざっぱにいえば、社内ITに関連する一切のことを取り仕切る権力といえるのではないかと思う。利用中のシステムに帳票出力機能を加えたいが実現してもらえるのか、壊れたPCをいつ直してもらえるのか、自宅からサーバに接続するための権限を与えてくれるのか。業務部門ユーザーがこれらのことで、いちいちシステム運用管理担当者の顔色をうかがわなければならないとしたら、従業員満足度どころの話ではない。
とはいえ、日々ありとあらゆる依頼・要望が押し寄せるシステム運用管理担当者の業務は、概して多忙である。そのため、あまりに忙しいときには業務部門ユーザーが悪魔に見えたり、業務部門ユーザーからの要望を「影の権力」で却下したくなることも多いことだろう。
しかし信頼は一度失うと回復が難しいので、どんなときにも平静を装わなければならない。そのためには人間的な成長も必要だが、それ以前にシステム運用管理担当者は仕事を選ばなければならない。
多忙を解消する方法は2つある。人を増やすか仕事を減らすかである。ただし人を増やすことは容易ではないので、まずは仕事を減らすことを考えるべきである。仕事を減らすためには、本当に重要な仕事だけ残して、どうでも良い仕事を切り捨てることが必要となる。パレートの法則という言葉をご存知だろうか。全体の2割程度の仕事が仕事全体の約8割を占めるという法則である。どうでもよい仕事をいくらたくさんこなしても、従業員満足度は決して上がらないのが一般的である。
以上、システムの運用管理担当者が社内でうまく立ち回るためのヒントをご紹介してきた。最後にまとめとしてシステム運用管理者の意識チェックリストを作成してみた。この中で1つでもNOがあったら要注意である。
▼著者名 sanonosa
国内某有名ITベンチャー企業に創業メンバーとして携わる。国内最大規模のシステムを構築運用してきたほか、社内情報システム業務を経験。韓国の交友関係が豊富なことから、韓国関連で多数のシステムインテグレーションを行ってきた。
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