連載
» 2007年05月15日 12時00分 UPDATE

ブライアン・ジョンソン ITILの文脈(1):ITILはなぜあいまいなのか (1/2)

「ITIL」という言葉に対する関心は、このところ大きな高まりを見せている。だが、ITIL書籍を読んでも、そのほかの参考書をめくっても、「どうも腑に落ちない」と感じる人々も少なくないはずだ。そんな人々に、ITIL執筆メンバーのブライアン・ジョンソン氏からのメッセージを短期集中連載でお届けする。第1回は、「ITILはあいまい、ソフトウェアにコストが掛かりすぎる」といった批判に答える。

[ブライアン・ジョンソン,@IT]

ITILのあいまいさとは

本連載は、2007年4月、@IT情報マネジメント編集部がブライアン・ジョンソン氏に行ったインタビューを構成したものです。文責は当編集部にあります。

ALT ブライアン・ジョンソン氏

 ITILはあいまいで、何をどのようにやればいいのか分からないといわれることがあります。たしかにITIL書籍(編集部注:「ITIL」はITサービスについてのベストプラクティスを示す一連のガイドブックのことを指す)はすべて、広範なフレームワークに基づいています。例えば「変更はワークフローに従って実施する」といったことが示されています。しかしほとんどの人々にとっての問題は、ITILを標準であるかのように扱っていることです。ITILは標準ではありません。ITILは「良い行い」(グッド・プラクティス)を提示したフレームワークであり、ISO 20000と対比されます。ISO 20000はITILのプロセスをさらにあいまいなレベルまで抽象化しながらも、組織が基準に適合しているかを識別するための監査を可能としています。「あいまいで監査に適さないもの」と、「抽象化されて監査できるもの」とは区別しなければなりませんが、これを間違える人が時々います。

 ITILには柔軟性があります。人々はITILをやるか、それともISO 20000をやるか、どのレベルまでやろうか、自分の組織ではこれこれの手順がベストプラクティスとなっているが、それに従わなければITIL準拠といえないのだろうか、と考えます。しかしもちろん、誰でもITILに準拠しているのです。ITILは標準ではないのですから。

 柔軟性とあいまいさの間にはある種の緊張関係が生まれます。組織はまず、どのレベルまでITILに準拠するのかを最初に決定し、その次にITILのどの部分を利用するのかを考えるべきです。

 ITILにはふわっとしたところがあるだけに、これをしようかあれをやろうか、これをちょっとやってみたけれど正しかっただろうかなどと考え出すと、実装に非常に長い期間がかかってしまいます。どんなに複雑な構成データベースを構築する場合でも、自分たちが本当は何をやりたいのかを最初に決めてしまい、それを計測するための指標(メトリックス)を定める必要があります。

高価なソフトウェアはなぜ必要なのか

 ITILは高価なソフトウェアを導入しなければならないのでは、という不満が聞かれることもあります。ソフトウェアは高価になることもありますが、ITIL自体はもっと高価な取り組みになる可能性もあります。なぜかといえば、ITILはすでに述べたようにふわっとしたところがあるだけに、組織として何をやりたいのかを決めることができないうちに漫然とインシデント管理や問題管理を始め、結局こうした手順が日常的に順守されなくなってしまうという結果に陥りがちだからです。日常的な順守はISO 20000では欠かせない要素となっていますが、これは非常に平凡で退屈な、繰り返しのプロセスです。ここにソフトウェアを使う意味があります。「これこれのことを順守していますよ」といえるようにするための作業を楽にしてくれるということです。これがコストを大きく低減してくれる可能性があるのです。

 ソフトウェアによる自動化をITIL準拠の問題と切り離すことができない人がいます。ソフトウェアを実装しさえすれば、ITIL準拠したことになるのか? ソフトウェアを実装しさえすれば、ISO 20000に準拠したことになるのか? ソフトウェアを実装しさえすれば、能力が高まるのか? 答えはすべて「ノー」です。ソフトウェアを実装することによって実現するのは、ITILのプロセスの一部をまかせられるようになるということです。

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