サービス内容を詳細化する手順Webビジネスの立ち上げ、ステップバイステップ(3)(3/3 ページ)

» 2008年01月17日 12時00分 公開
[大川敏彦,ウルシステムズ]
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北尾 平松さん、忙しいところごめん、(3)事業・サービス詳細、いろいろ考えてみたんだけど、4)フィースキームについて、どう考えてよいのか分からない。どうすればよいかな……ヒントだけでも教えてほしいんだけど。


 しばらく連絡がなかった。フレンチトーストはとっくに食べ終わっていた。ウェイトレスの視線が気になり出したので、そろそろ店を出ることにした。家に帰って、メールを確認してみると、平松からの連絡が入っていた。


平松 頑張っているようですね。フィーの決め方には、いくつか考え方があるけど、まずは、定額課金にするか従量課金にするかが大きな選択になります。それはサービスの内容・性質によって決めるとよいでしょう。電話の通話料のようにサービスの提供量が変動するものは従量課金にするという風に。あとサービスオプションごとに課金するか、一括で課金する、なども考えられます。

  金額の決め方ですが、大きくは3つあって、1つ目はコストを積み上げ、利益を上乗せして単価を決める方法、2つ目はユーザーから見たサービスの提供価値に対する妥当感や求めやすさなどから決める方法、3つ目は、他社と比較して、競争力のある価格を決める、などがあります。いずれの場合も、次の(4)投資対効果の算出のところで、何年で回収できるのか、事業として成り立つのかを考える必要があります。

 あと今回関係ないかもしれませんが、フィースキームの最初のところで、誰が、何の価値に対してお金を払うのか、を考えることも重要です。例えば、アルバイトの情報。これまでは情報提供料として読者から料金を取っていましたが、最近のフリーペーパーは、情報提供者側からお金を貰って、読者からはお金を取らないようになっていますよね。今回の場合だと、居住者にサービスを提供するWebサイトに、地域のスーパーマーケットの広告を掲載して、そちらから広告料をもらうなんていうのも考えられます。

 ……ごめんなさい。打ち合わせがあるので、今回は取りあえず、これくらいで。少し考えてみてください。


 平松からのメールはここまでだった。北尾はこれらをヒントに自分で考えてみることにした。

 『従量課金か定額課金か、という問題だが、これは平松に連絡する前から定額に決めていた。オプションごとに課金するかどうかは少し置くとして、まずは管理組合サイトの料金を考えることにした。問題の金額だが、コスト積み上げでいくには、コストそのものを決める必要があるので、これも次にまわそう』

 まずは、考えやすそうな提供価値に対する妥当感から考えてみることにした。

 『この管理組合支援サイトの料金は月々の管理費に組み入れるのがよさそうだ。年間の管理費は大体分譲価格の0.6% というのが相場だから、うちの平均販売価格の3000万円と掛けることで18万円/年、月当たりだと1.5万円になる。例えば、これの5%をサイト運営費にするとしたら……、750円/月……。これくらいもらっても悪くなさそうだな……』

 なんとなく妥当感が感じられてきた。

 『コスト積み上げで考えたらどうなるだろう……』

 システムの構築費用などが掛かりそうだったが、北尾には全然分からなかった。困った北尾は、休日ではあるが、駄目もとで自社のWebサイトの運営を担当している松畑にメールで問い合わせてみることにした。予想を反して松畑はすぐに返事をくれた。


平松 北尾さん、今日はちょうど社内のファイルサーバの入れ替えがあったので、出社していました。お話の件ですが、いくつか確認させていただいてもよろしいでしょうか。そうそう、可能ならGoogle Talkで話したいのですが、北尾さんってアカウント持っていましたっけ。


 北尾はすぐに返事を返した。


北尾 松畑さん、忙しいところ、すみません。Google Talkのアカウント持っています。早速お願いします。


 平松はすぐにGoogle Talkを立ち上げた。


松畑 ではまず確認です。「管理組合の支援サイト」を構築、展開する際の“コスト項目”と“金額を出す”、でいいですか?

北尾 はい。

松畑 “契約した管理組合が、インターネットを介して利用できるASPシステムである”という前提でよいですか?

北尾 OKです。

松畑 24時間運営ですか? (違うとは思いますが……)

北尾 365日24時間にします。(さまざまなライフスタイルに対応するため)

松畑 システムを2重化させますか? (ダウンしても数時間後に復旧できる程度のサービスレベルでよいですか? 2重化するとハードコストが単純計算で2倍になります)

北尾 2重化までは要りません。数時間(6から12時間?)くらいの復旧でよいです。

松畑 分かりました。次は、システム規模感を知るためにいくつか質問させていただきます。

北尾 はい、はい。

松畑 画面数はどれくらいを考えています?

北尾 画面数か、ちょっと待って。どう考えればいいんだろう。

松畑 サービスメニューから“機能一覧”とか“画面一覧”って、作ってないんですか。

北尾 まだ、そこまでは行っていないんだけど……

松畑 そうですか……。でもお聞きすると、そんなに大きなサイトではなさそうですよね。いまは取りあえず、50ぐらいにしておきます。後でちゃんと算出しておいてくださいね。

北尾 分かった、分かった。

松畑 帳票数はどうですか?

北尾 帳票数……。難しいな。あんまり考えていなかったけど。

松畑 そうですね。お聞きする限りではあまり必要なさそうですね。じゃあ、次、一管理組合における利用ユーザー数。

北尾 えっと、これは分かるぞ、うちの規模のマンションだと、1建物当たり50〜100戸なので、それくらいの数にするか。

松畑 システム管理者数は? 24時間でしたよね。このWebサイト。

北尾 えっと、逆に聞きたいくらいだけど、取りあえず2、3名……かな。(最小構成で考えたいです)

松畑 分かりました、じゃあいくつの管理組合まで初期投資だけで利用できますか?

北尾 ちょっと待って。そんなこと考えてなかった。少し計算するか……


 北尾は慌てて、計算した。

 うちの来年の新築の建設予定は、30件、1年置きに5件ずつ増えていくから……、2年目までは初期投資でいくとしたら、2年分で65件、1件当たり50戸として3250戸分……。こんなものかな……。計算が終わって、確認すると松畑はまだ在席中のようだった。


北尾 初期投資で利用できるのは、2年目ぐらいまでと考えて、3250戸、管理組合数だと、65組合を予定しています。

松畑 ありがとうございます。大体聞きたいことは終わりました。少しお時間をいただいて、あとはメールで返信します。

 それから、日曜いっぱい待ったが、松畑からの返事はなかった。あまりせっついても仕方がないと思ったのと、気分転換をしたいこともあって、その日は特に催促しないでおいた。日曜の夜になり、メールを確認してみると、以下のようなメールが入っていた。


松畑 北尾さん、ちょっと雑ですが、考えてみました。添付ファイルをご確認ください。分からないところは、対面で行った方がよさそうに思います。会社でお気軽にお声掛けください。よろしくお願いします。


北尾は早速添付ファイルを確認した。

筆者プロフィール

大川 敏彦(おおかわ としひこ)

ウルシステムズ株式会社 ディレクタ


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