SOAの効果を引き出すためのビジネスモデリング実践! UMLビジネスモデリング(9)(2/2 ページ)

» 2008年03月27日 12時00分 公開
[内田功志,システムビューロ]
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ビジョンや戦略あってのSOA

 昨今、SOAに関する議論は活発に行われていますが、SOAの定義自体にまだ厳密に確立されたものがなく、方法論もさまざまなものが提案されています。中にはビジネスワークフローから直接SOAのサービスを呼び出して利用できるようにするツールも提供されています。一見、ビジネスモデリングとSOAをつなげるためにはもってこいのように見えますが、実際に複雑なビジネスアプリケーションの開発で利用するには、まだ改良の余地が多く残されているように思えます。

 いずれにせよ、SOAの導入を検討するに当たっては、現状のビジネスの流れをざっと見ただけで、

 「この部分はこんなSOAサービスをはめ込めば、取りあえず開発費が安くあがるだろう」

などと安易にシステム化をしても意味がありません。これでは、たとえシステムが安価に出来上がったとしても、ビジネス上の問題は残されたままです。

 SOAの効果をより引き出すためには、洋菓子店のケーススタディでも説明したように、まずはビジョンや戦略にマッチしたシステムとはどんなものかを十分議論する必要があると考えます。それをしっかり行った上で、実際にシステムを開発する段階でどの部分を既存のサービスでカバーするのか、検討していけばいいのです。そうすれば、開発に要するコストや期間を圧縮できる上、ビジネスのニーズによりマッチした役に立つシステムを実現することができます。

ビジネスとITの間のギャップを極小化する

 さて、9回にわたってビジネスモデリングについて解説してきた本連載も、今回が最終回となります。

 最後に、本連載で紹介した方法論がなぜ必要なのか、どこが優れているのかということについて、再度簡単に説明して終わりたいと思います。

 従来のシステム開発のやり方では、「こんなシステムが必要なのではないかなあ……」というあいまいな感覚の延長線上でシステム化してしまうことが多かったように思われます。その結果、開発したシステムがビジネスにとって本当に有効なものになるとは限らず、プロジェクトが失敗する確率が高かったのです。

 本連載で紹介した方法であれば、開発したシステムと現実世界のビジネスとの間のギャップを最小限に抑えることができるため、手戻りや無駄が少なくて済みます。この方法なら、本当に必要な、本当に開発すべきシステム像(ユースケース)を見つけ出すことができ、クライアントも開発者もお互いに納得のいくシステムを実現することができるのです。

 なお、本連載は拙著『戦略マップによるビジネスモデリング』(内田 功志、羽生田 栄一=著/翔泳社/2007年)の補足説明として執筆しました。書籍や連載でも書き切れなかったことがまだまだたくさんありますが、これはまた別の機会にご紹介したいと思っています。

 本連載はこれで終了となりますが、ぜひ皆さんにこの方法論を実際に試していただければと願っています。本格的に導入したいという方への助力は惜しみません。ご愛読ありがとうございました。

筆者プロフィール

内田 功志(うちだ いさし)

システムビューロ 代表。日立系のシステムハウスで筑波博に出展した空気圧ロボットのメインプログラマを務め、富士ゼロックス情報システムにてオブジェクト指向の風に触れ、C++を駆使して印刷業界向けのシステムを中心に多数のシステムを開発。現在、ITコンサルタントとして、システムの最適化や開発の効率化などの技術面、特にオブジェクト指向開発に関するコンサルティングやセミナーを実施してきた。最近ではビジネスに即したシステム化のコンサルティングを中心に活動している。


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