ユーザーニーズに“More's law”で応えるHPHPが「HP Asia Pacific & Japan Executive Forum 2008」を開催

» 2008年04月17日 00時00分 公開
[大津心,@IT]

 ヒューレット・パッカード(HP)は4月16日、インドネシア・バリにて同社のハイエンドサーバの最新情報を紹介する年次イベント「HP Asia Pacific & Japan Executive Forum 2008」を開催。ハイエンドサーバの現状や、同社が推進する次世代IT基盤「Adaptive Infrastructure」の今後の方向性などが説明された。

Adaptive Infrastructureの将来は『Polymorphic Computing』

 登壇した米HP Business Critical Systems担当Senior Vice President&General Managerのマーティン・フランク(Martin Fink)氏は、まず同社のIntegrityサーバが今年に入って非常に好調であることをアピール。「当社のR&Dのうち37〜38億ドルのかなりの部分がハイエンドサーバ開発に費やされている。金融業界にはなくてはならない存在になっており、毎日ATMやクレジットカードの何兆ドルものトランザクションをIntegrityサーバが処理している点がそれを証明している」と信頼性が高いことを強調した。

図写真 「Adaptive Infrastructure」の進化版となる「Polymorphic Computing」の概念図

 このように多額のR&Dを投資しているものの、ユーザーのニーズはさらに上を望んでいるのが現状であり、「常にお客さまからは、『もっともっと』『もっと高性能を』という声をもらっている。そこで、当社では『ムーアの法則』にちなんで『More's law』でこのニーズに応えていくつもりだ」(フランク氏)とした。

 具体的には、同社が推進している次世代ITインフラ基盤である「Adaptive Infrastructure」(AI)をより進化させ、「ウルトラAI」「Polymorphic Computing」(多様なコンピューティング)へと変化させていくという戦略だ。同社のいうPolymorphic Computingとは車に例えた場合、ホイールやハンドル、エンジンなどの各パーツを工場で組み立てて、最終的にスポーツカーやSUV、1BOXカーなどになる。そして、ユーザーはその中から好みの車種を選択して購入するのが通常だ。しかし、Polymorphicな発想では、「今日はピクニックのために4WDを、明日はデートだからフェラーリ、明後日は家族全員で出かけるから1BOXカーがいい」といった要望に柔軟に対応できる車を提供するというものだ。

 この考えをITの世界に応用すると、メモリやCPU、ストレージなどで構成されているサーバをニーズに応じて必要な部品を必要なだけ利用できる環境を指す。例えば、「今日は40GBのメモリと、40個のCPU、4TBのストレージが必要な処理を実施したい」というケースでは、それに応じた部品をリアルタイムで提供するというものだ。

 このようなPolymorphic Computingが実現することによって、「企業はサーバ構築や運用コストを削減できるだけでなく、ビジネスルールだけを構築するだけでビジネスを開始できるようになる。このようなニーズは大きい。ビジネスニーズの変化にも迅速に対応できる。現状では、まだモジュール単位での対応だがAIの行く先としてこのようなビジョンを示している」(フランク氏)と説明した。

Polymorphic Computingは4〜5年後に完全に実現できる

 続いて、フランク氏にPolymorphic Computingの詳細と、日本におけるメインフレームのマイニングなどについて話を聞いた。

フランク氏写真 米HP Business Critical Systems担当Senior Vice President&General Managerのマーティン・フランク氏

 講演でフランク氏が指摘していた「現在のAIからPolymorphic Computingへ移行するに当たっての問題点」を、同氏は「オプティカルコネクションが一番のキーポイントだ」と説明した。このオプティカルコネクションの高速化を実現できれば、かなりPolymorphic Computingに近づくという。具体的には、「4〜5年後には完全にPolymorphic Computingを実現できる見込みだ」と語った。

 また、Polymorphic Computingが登場することによって「コンピュータは変わるざるを得なくなるだろう。データセンターの様相もかなり変化する。ただし、現状ではPolymorphic Computingを実現する上での管理ソフトウェアも課題の1つに挙げられる。オプティカルコネクションと管理ソフトウェアを完成させることでPolymorphic Computingはかなり近づくだろう」と説明した。

 また、現在の日本のメインフレームの状況については「日本はまだまだメインフレームが多い。従って、マイグレーションビジネスのチャンスは多い。一方で、日本は『リスクを嫌う傾向がある』所がチャレンジな点だ。まずはオープンシステムでも同じことができる点をアピールし、続いてNTTデータやCTCなどマイグレーションを経験したパートナーと協力することでこの問題を解決できると考えている。しかし、マイグレーションにはまだ数年かかるのが実状だろう」とコメントした。

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