“短期導入・2年で投資回収”が仮想化導入のポイント仮想化インタビュー(2)(2/3 ページ)

» 2008年11月28日 12時00分 公開
[大津心,@IT情報マネジメント編集部]

仮想化のメリットは、CPU数が減ってライセンス料が減ること?

 HPではこのようにデータセンター統合における事例を持っているが、では成功させるポイントはどこにあるのだろうか。テクノロジーソリューション事業統括 MFA営業部 シニアコンサルタント 小桧山淳一氏は、統合の重要なポイントに「モジュラー化」と「IT環境の標準化」を挙げる。

 その理由はシステム運用を簡略化し、将来的には運用の自動化を目指すうえで、標準化やモジュラー化は前提条件として必要だからだ。標準化やモジュラー化を行わずに運用すると、その種類に応じて管理方法が異なったり、当てなければならないパッチの種類が増えたりする。従って、まずシステム統合を行う前準備として、「サーバやアプリケーションなどの棚卸しを実施する」「サーバやアプリケーションの標準化を実施し、可能な限り種類を減らす」ことが重要だとした。

 実際、HPがサーバ統合を行った際には、「サーバ/ストレージの標準化」「建物レベルからラックまですべてコンポーネントでモジュラー設計にする」などをまず手掛けたほか、アプリケーションも前述のように4000弱あったものを1500種類にまで削減したという。

 このように標準化などを行ったうえでサーバ統合を行うことで、HPでは1人の管理者が管理できるWindowsサーバの台数が、従来は50〜60台程度だったのに対して、最大330台まで管理ができるようになったという。その理由を、久保氏は「標準化してサーバ管理が楽になったほか、サーバをブレードサーバにすることで、リモート管理機能が向上した点も管理できる台数の増加に貢献しているはずだ」と説明する。

 そのほか、仮想化導入によるサーバ統合をビジネスの視点で見ると、サーバ統合による最大のメリットは「物理サーバが減ること」だという。

 これは当たり前のように感じるかもしれないが、テクニカルセールスサポート統括本部 BCSソリューション本部 シニアITスペシャリスト 高橋誠氏は、「やはり、イレギュラーな事故はほとんどの場合、ハードウェア障害に起因する。従って、物理サーバが減ることはこのハードウェア障害を減らせるので、全体的な事故を減らす効果があるからだ。また、昨今のアプリケーションの課金体系はCPU数課金が多いので、サーバ統合でCPU数が減ることで、アプリケーションライセンスもかなり減るだろう」と説明した。

日本では、まずIT資産の棚卸しから始める必要あり

 このように、仮想化技術を導入するには標準化やモジュール化が有効であることが分かったが、高橋氏は日本のユーザー企業の現状を見ると、それ以前に「IT資産の棚卸し」がそもそも必要だと強調する。

 「日本のユーザー企業の多くは、本番環境の状況は把握していても、テスト環境になると把握できていない場合が多い。ひどいケースでは本番環境も分かっていないこともある。経理部門の固定資産台帳が更新されておらず、台数が合わないケースも多い」(高橋氏)と、ユーザー企業の現状を説明する。

 従って、このようなユーザー企業の場合、まずIT資産をきちんと棚卸しして把握し、整理する必要がある。逆に、この棚卸しをきちんとしなければ、その後の標準化や統合を行った場合の投資効果を正確に見積もることはできない。

 また、数百台規模のサーバを有している場合には、人手で棚卸しをするのも難しいため、ネットワークにつながっているサーバの情報を収集する専用のツールを用いて管理するのが有効かつ正確だという。「やはり、棚卸しや標準化と聞くと面倒だと考えて、ハードルが高くなる傾向がある。その点、ツールを用いれば自動的かつ迅速に棚卸しが可能だ。例えば、当社のユーザーの場合、350台のサーバ情報を2日間で収集してデータベース化することができた」(高橋氏)と実例を紹介した。

 また、最近ではCSRの観点やグリーンITの取り組みの一環として、経営陣から「電力消費量を何とかしろ」といわれるケースも多いという。この場合にも、まず現状の電力消費を把握するために、IT資産の棚卸しが必要であり、さらには仮想化技術による統合も視野に入る。このように、トップダウンで資産の棚卸しや標準化に取り組むケースも増えてきているとした。

 そのほか、テクニカルセールスサポート統括本部 シェアードサービス本部 インフラストラクチャソリューション部 ソリューション アーキテクト 山根正士氏は、「攻めの意味での仮想化利用が増えてきている」という。仮想化技術を導入すると、ハードウェアと業務アプリケーションの間に“仮想化技術というレイヤ”が入るため、必ず複雑性は増す。

 そのため、管理面も複雑化するものの、うまく仮想化技術を導入することで、前述のようにアプリケーションライセンスや運用の簡略化も図ることが可能だ。「つまり、仮想化技術をうまく使うことができれば、積極的にアセットと運用コストを集約・削減できる。このように“攻めの姿勢”で仮想化技術に取り組もうとする経営者が増えてきた」(山根氏)と説明する。

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

注目のテーマ