“短期導入・2年で投資回収”が仮想化導入のポイント仮想化インタビュー(2)(3/3 ページ)

» 2008年11月28日 12時00分 公開
[大津心,@IT情報マネジメント編集部]
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経営者はコストを削減するために投資をしなければならない

 経営者視点で見た場合の仮想化導入は、どのような状況なのだろうか。

 山根氏は「やはり、仮想化導入では初期コストが少し高めだが、導入後の電気代やアプリケーションライセンス料などの保守費用が安くなるので数年間で投資は回収できる。それを具体的な数字を示して、初期コストの高さを数年で回収できることを納得させられるような説明が必要だ」と説明する。

 仮想化技術を用いてシステム統合を図る場合、初期コストはおおよそ通常の1.5倍程度かかってしまうという。「通常の場合、その投資を2年以内で回収できないと決心できない経営者が多い」(山根氏)といった傾向もあるという。

 そこで、経営者を説得するためのコツとして、「短い期間で一気に導入するのがポイントだ。短期で導入できれば導入コストを抑えることができるし、回収期間も前倒しできる。回収期間を早く終わらせて費用対効果をプラスに転じさせることが重要だ」(高橋氏)と解説した。

 実際、高橋氏が推奨するのが「初めの半年で導入を終え、次の半年で評価する」という方法だ。このように1年間で導入と評価をすれば、翌年以降の保守費用の安さを経営陣に提示することができるため、経営陣も納得しやすいという。また、「早期に費用対効果がプラスになるのであれば導入しよう」と考える経営者も多いと同氏はいう。

 例えば、サーバ数が100台の企業の場合、「現状のハードウェアサポート費用が1台当たり10万円で年額1000万円」と仮定すると、仮想化技術を用いたサーバ統合で10台に集約できればサポート費用は年額100万円になる。従って、初期コストが2000万円掛かったとしても、2年強で回収できる計算となる。そのほか、10台に集約できれば空調コストやサーバ機器の電気代やサーバラックレンタル料、アプリケーションライセンスも減ることから厳密には2年以内に回収可能だ。

 このことから高橋氏は「“いかに従来のやり方を変えるのか?”という発想が重要だ。従来のやり方を変えることを前提に、コストメリットを出す方法を現在の方法と比較検討することが必要だ。投資対効果をきちんとシミュレーションして短期間で回収できることをアピールできれば、経営者も納得するだろう。経営者は将来的なコスト削減を実現するために初期投資を恐れてはいけないのだ」と強調する。

仮想化はサーバを減らすだけでなく、目に見えない効果も多い

 HPではワールドワイドでITコスト削減に取り組み、3年間でデータセンター統合や運用コスト削減に成功した、かなりの成功事例だ。日本のユーザー企業の話を聞くと、仮想化技術を有効活用し、HPのように成功している事例もあるものの、こうした企業はまだ一部の先進企業であり、多くの一般企業は前述のようにその前の棚卸しが必要な場合がほとんどだという。

 ただし、現在の経済情勢を考慮すると、経営陣からの運用コスト削減のプレッシャーは今後さらに拡大していくだろう。その際に、仮想化技術は有効だ。物理サーバを減らすことで、前述のようにハードウェア故障やアプリケーションライセンスの減少といった目に見えて分かりやすい効果のほかに、「開発環境がすぐに手に入るようになった」「部署サーバを容易に立てられるようになった」「資産管理が楽になった」といった直接目に見えない効果も大きいという。

 山根氏は、「初期投資が高いために経営者が及び腰になるのは分かるが、数年で回収した後は逆にいままで掛かっていた運用コストを浮かせることができるようになる。この“浮かせることができる”という点がポイントだ。そうやって浮かせたお金であれば思い切って次の投資に回せることができるだろう」と語っていた。このような“攻めの姿勢によるコスト削減”が重要なのだという。

 日本のIT投資は、欧米と比較して運用コストの占める割合が格段に多いという。まずは、IT資産の棚卸しや標準化に取り組み、その後に続くサーバ・データセンター統合や運用自動化のベースを築くことが重要だ。

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