“短期導入・2年で投資回収”が仮想化導入のポイント仮想化インタビュー(2)(1/3 ページ)

世界同時不況になる懸念が強まってきた影響で、経営者はIT投資や運用コストの削減に頭を悩ませている。その際の有効な武器となり得るのが“仮想化技術”だ。今回は自社で仮想化技術を導入し、データセンター統合を成功させ、さまざまなユーザー企業への導入事例を持つ日本ヒューレット・パッカードに話を聞いた。

» 2008年11月28日 12時00分 公開
[大津心,@IT情報マネジメント編集部]

 グリーンITや地球環境への取り組みが盛り上がりを見せているほか、経済状況の悪化から経営者のサーバ統合・データセンター統合による運用コスト削減意欲は高まっている。それらを実現する技術として注目を集めているのが「仮想化技術」だ。

 仮想化技術はレガシー時代から存在するが、VMwareの登場でWindowsサーバでの利用も広まってきている。しかし、「本当に仮想化技術を導入するとコスト削減できるのか?」「逆にシステムが複雑化して運用コストが増えるのでは?」「初期投資が高くて手が出ない」といったユーザーの不安も耳にする。

 そこで、今回は自身で仮想化技術を導入することで大規模なデータセンター統合を実現し、大きな効果を上げており、さらに数多くのユーザー企業への導入実績も持つ日本ヒューレット・パッカード(以下、日本HP)に、ユーザー企業における仮想化技術の導入状況について話を聞いた。

3年で運用コストを1000億円削減、2年間で投資を回収

 まず、実際の事例として、米HPが手掛けた自社のITインフラ改善プロジェクトを紹介しよう。このプロジェクトは、「HPが抱えているさまざまなITの問題を3年間2000億円をかけて改善していく」という目的で実施されたもの。その際に仮想化技術を取り入れることで、データセンター統合の効率化に貢献したという。

ALT 左から、日本HP テクニカルセールスサポート統括本部BCSソリューション本部シニアITスペシャリスト 高橋誠氏
テクノロジーソリューション事業統括MFA営業部シニアコンサルタント 小桧山淳一氏
テクニカルセールスサポート統括本部シェアードサービス本部インフラストラクチャソリューション部ソリューションアーキテクト 山根正士氏
テクノロジーソリューション事業統括マーケティング統括本部 Adaptive Infrastructureビジネス本部担当マネージャ 久保耕平氏

 このプロジェクトの結果、ITコストは2005年には売上高の4%だったものが2008年には2%以下になったほか、プロジェクト数も1200以上あったものを500以下に、IT拠点数も100以上から29に、アプリケーション数も4000弱から1500にまで削減した。

 また、750以上のデータマートを1つのデータウェアハウスへ統合し、データセンター自体も85から6に統合。データセンターは、具体的に米国オースチンに2個所、同ヒューストンに2個所、アトランタに2個所の計6個所となった。各データセンターは5万平方フィート以上の敷地を持ち、15マイル以内にバックアップセンターを用意しているという。このデータセンターでは、仮想化技術や運用自動化、電源・冷却の最適化などを目指しており、3年間で年間10億ドルのコスト削減を実現した。

 年間10億ドルのコスト削減を実現したことから、日本HP テクノロジーソリューション事業統括 マーケティング統括本部 Adaptive Infrastructureビジネス本部 担当マネージャ 久保耕平氏は「年間10億ドルなので、年間約1000億円の削減効果があった。従って、2000億円の初期投資が2年程度で回収できた結果になる」と説明する。

 また同氏によると、「統合前は、ラック数は1万数千に上っており、さらにスペース需要は年率6%のペースで増えている状況だった。これでは当然スペースも足りなくなるうえに、運用コストも必然的に増加した。それを統合後は、ラック数を削減できただけでなく、共通基盤化してシェアードサービスとして社内に提供することが可能になった」という。

 アプリケーションとインフラ環境を分離した共通基盤をデータベースや、アプリケーションサーバなどのIT機能ごとに構築してサービス化し、インフラ部分は仮想化技術を利用して“あたかも巨大な1台のサーバがあるかのように”した。アプリケーションサーバについては、「Shared Application Server Utility(SASU)」を構築。SASUは同社サーバやHP-UXの上に仮想化技術やJava仮想マシンを載せ、さらにアプリケーションサーバやシングルサインオン機能を付加した上で業務アプリを動かす仕組み。これにより、CPUリソースを負荷に応じて振り分けることが可能になったという。

 SASUの導入により、同社では70%のTCO削減とCPU利用率の300%向上を実現。新規アプリケーションの導入時間の短縮やソフトウェア・ハードウェアのコスト削減も実現したという。これらの点について久保氏は、「従来は業務システムごとにサーバを用意し、1台のハードウェアの上でアプリケーションが動いていたので、サーバやそれに伴うライセンスフィーや運用コストが増大していた。しかし、今後は用意された共通基盤上で提供される必要なサービスを選んで使うことで、アプリケーション開発者は、コストや時間を大幅に効率化することができる。これも一種の企業内クラウドコンピューティングの取り組みといえる」と説明した。

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