仮想化技術は、長期的な視点で活用すべき仮想化インタビュー(3)(2/2 ページ)

» 2008年12月02日 12時00分 公開
[内野宏信,@IT]
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ユーザーに意識させずに、リソースを効率化

 事実、仮想化環境をより効果的に運用するための、さまざまな技術が注目されている。その1つが「モビリティ」だ。稼働中の仮想マシン全体を瞬時に、停止させることなく別の物理サーバに移動させる技術で、サーバのリプレースやワークロードの負荷分散を、手間なくスムーズに行うことができる。ヴイエムウェアの「VMotion」などの製品が多くの企業の関心を集めている。

 「ポイントはやはり、システムを使っているユーザーには意識させずに、ほかの物理サーバに瞬時に切り替えられること。つまり業務をストップさせることなく、サーバの統合やメンテナンスが行える。物理サーバの使用率が低いときには、1つの物理サーバに仮想マシンを集約し、ほかのサーバは電源を切ることで省電力、CO2排出量削減を図るなど、グリーンITに貢献することはいうまでもない」(濱田氏)

 OS、ミドルウェア、アプリケーションを1つのパッケージに統合した「仮想化アプライアンス」も関心を集めている。通常、ハイパーバイザを使ったシステム構成は、ハイパーバイザ上にOS、ミドルウェア、アプリケーションを載せた形となるが、仮想化アプライアンスの場合、OS、ミドルウェア、アプリケーションを1セットとしているため、アプリケーションのインストールやOSに対する各種設定を行う手間がかからない。

 「つまりハイパーバイザに載せるだけで、すぐにアプリケーションを利用できる。アプリケーション・ベンダにとっては、ソフトウェア配布の効率化を図るものとして、ユーザーにとってはアプリケーション活用の利便性を高め、システム構成をいっそう単純化できるものとして期待されている」(濱田氏)

仮想化環境を確実にコントロールできる体制を

 このように、仮想化環境を有効に活用するための技術はますます充実しつつある。ただ、濱田氏は「個々の仮想化技術が浸透しつつあるいまこそ、仮想化環境全体をどう効率的にコントロールしていくか、しっかりと考えるべきだ」と指摘する。

「仮想化環境の構築は、初期コストではなく、長期的な視点でトータルに考えるべき」と濱田氏 「仮想化環境の構築は、初期コストではなく、長期的な視点でトータルに考えるべき」と濱田氏

 例えば、5台の物理サーバを1台に統合しても、仮想サーバの数は減っていない。1つの企業内でもVMware ESX/ESXiやCitrix Xen Serverなど、異なるベンダの仮想化ソリューションを併用している場合もある。つまり、物理的には簡素化できても、論理的には複雑度が増し、管理の難易度は上がっている。

 また、サーバ仮想化は仮想化という取り組みの1つに過ぎない。ほかにも、複数のストレージをまたいで、あたかも単一のストレージであるかのように機能させるストレージ仮想化や、ネットワークケーブルの機能を仮想化して、ハードウェアから伸びるケーブル本数を減らし、管理の手間を削減するネットワーク仮想化、仮想サーバ上にクライアントPC環境を作り、そこでデスクトップアプリケーションを稼働させることで、クライアントPCの管理を一元化するクライアント仮想化など、さまざまなバリエーションがある。

 「個々の仮想化技術のメリットを引き出し、戦略的に使いこなすためには、サーバだけではなく、ストレージ、ネットワークなど、システム全体を俯瞰(ふかん)し、バランスよく仮想化環境を整えることが大切。また、仮想化環境全体を可視化し、確実に管理・コントロールできるダッシュボードを導入するなど、経営目標に合わせて、スムーズに運用できる体制を作ることが重要だ」(濱田氏)

 仮想化関連のシステム投資についても、「目先のコスト削減だけを追求するべきではない」とアドバイスする。「たとえ初期投資を抑えても、システムは長期にわたって使い続けるもの。結局はランニングコストが大きく響くことになる」(濱田氏)

 濱田氏は「仮想化は“運用・管理”が重要なキーワード。自社の経営目標と、ITを使って実現したいことをしっかりと見定め、それに合わせた仮想化環境と、それを効率よく運用できる体制を築けるよう、長期的な視点を持つことが大切だ」とまとめた。

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